土曜日, 9月 02, 2017

麻耶雄高著「貴族探偵」、殺人トリックやプロットともにコミック的であり、しかも主人公の探偵は貴族探偵という推理は使用人任せという奇抜なアイディアは作者ならではの突飛な発想だ。気軽に読める頭を休ませるためのコミック探偵ものだ。
アガサ・クリスティー著「ホロー荘の殺人」、ホロー荘に集う数人の客人の中に医師のジョンとその妻ガーダがいた。そして医師がプールで死体となって浮かんでいた。そのプールを見下ろしてリボルバーを持った妻がいた。この殺人事件を追うグリンジ警部と近くの別荘に来ていたポアロ、捜査は混沌として登場人物の姿が詳細に描かれていく。この事件の真相は意外な結末となった。絡み合う愛憎、人生に失望しながら愛を獲得する青年、病院でジョン医師と共に奇病と戦うバーさん、愛する人を見失う芸術家、人生の様々なシチエーションを描いたミステリー。
A・ルースルンド&S・トウンベリ著「熊と踊れ 下」、スウェーデンで、実際に発生した襲撃・銀行強盗事件を題材にしたというフィクションだそうだ。この物語の犯人の生い立ちつまり家族との絆をバックグラウンドを強く意識させる。そんなにも裕福でない家庭、厳格にして暴力的父親イヴァンと母マリーの下で育った3人の兄弟の成長過程での精神状況を背景に軍の武器庫から強盗事件さらに現金輸送車襲撃と続く9件もの銀行強盗の裏に隠れた真実を明かす。
A・ルースルンド&S・トウンベリ著「熊と踊れ 上」、スウェーデンのストックホルムで貧困家庭で暴力を振るう父を持った兄弟3人が、現金輸送車を襲い強奪する。さらに銀行強盗を1件実行し多額の現金を強奪、ブロンクス警部の執拗な捜査が続く中で2件目の銀行強盗事件が発生さらに中央駅のロッカーに爆弾を仕掛けた。その爆弾が爆発したという。スウェーデン史上稀にみる凶悪な銀行強盗事件を描きながら3人の兄弟愛と父親との関係を描き単なるミステリーと一線を画した好著だ。
松岡圭祐著「黄沙の籠城 下」、いよいよ籠城も佳境に入り戦闘は激しさを増し死者も膨大となった。東交民巷も陥落寸前の状況となった。そんな状況の中で日本軍の柴中佐、櫻井伍長の活躍は日本人の心、精神として後日世界に知らしめることとなった。 東交民巷という閉じた狭隘な世界は、そのまま現代の世界に通ずるのではないか?日本が日本人が果たす役割とは精神的支柱を認識し世界に対しいて平等に博愛の精神を持って正道を歩むことかも知れない。
松岡圭祐著「黄沙の籠城 上」、第一次世界大戦前の中国北京、西太后が支配する北京その中に東交民巷という城壁に囲まれた外国軍隊の居留地があった。西太后の権力が衰え無頼の黄巾達の大群に包囲され防衛を余儀なくされる。 東交民巷を防衛すべく各国の兵士が最前線で戦闘に当たる。櫻井伍長を中心に柴中佐各国の軍幹部らとの交流を描く。
アガサ・クリスティー著「邪悪の家」、休暇中のポアロが保養地のホテルで出会った事件を元に彼の灰色の脳細胞が忽然と動き出す。名前が同じというヒントを元に殺人事件を組み立てる著者の見事なプロットには感心するしかない。確かに冗長性は否めないものの素晴らしいミステリーだ。
藤沢周平著「一茶」、俳人一茶の人生を描いた書だ。赤貧の中でも執拗に句を作り続ける情熱は何処から来るのか。生涯を貧困と隣り合わせに暮らした一茶はまた生涯二万句を作ったといわれる奇人天才だ。江戸から長野は信濃町の辺鄙な雪深い村に余生を求めた一茶、著者が書く一茶像は世間一般人の一茶そのものでその人生の機微が伺われて、人生とは?と考えさせらる物語だ。
堂場舜一著「Sの継承 下」、逸る革命戦士を押しとどめようと警察官工藤と連携し国重は思いとどまった。それから50年経ち今日本で一人の青年天野が果敢に革命に挑戦したS号名乗る毒ガスを手に。50年前の当時のメンバーだった松島の指導の下に彼天野は革命を決意した。警視庁との対決結局革命は成功せず捕縛された。日本の議会制民主主義への疑問から革命というプロットを導きだし警察ミステリーともとれるシナリオは作者の発想の豊かさの証明か。

堂場舜一著「Sの継承 上」、戦後満州からの引揚者国重は親父が儲けた財産を元に複数の事業をこなしている。戦中から戦後この国日本を変えなければ、という気概を持ち続けている。そんな中で、七の会を発足させる。場所は赤城山の麓、厳選したメンバー七名からなる革命を実行する面々だ。議会制民主主義を倒し新たな政府を作ろうとする正に革命だ。その為の強力な武器、戦中日本軍が開発をした毒薬S号と異名を持つ劇薬を作り脅しに使うという計画だ。