木曜日, 6月 01, 2017

ロバート・ゴダード著「隠し絵の囚人」下、物語は第二次世界大戦前の1940年代と現代の間を行きつ戻りつエルドリッチ・スワンの行動と人生をまた叔父であるスティーヴン・スワンとの人生行路をたどってゆく。ピカソの贋作を元にサスペンス展開を予想したが、案に図らず両スワンの苦悩、絶望と恋愛、人間的愛情を豊富に散りばめた作品であった。
ロバート・ゴダード著「隠し絵の囚人」上、スティーヴンは叔父がまだ生きていることを知らされる。叔父の過去第二次世界大戦前後の収監され獄中での生活の過去、さらにピカソの贋作にかかわる出来事、叔父スワンがなにを考え行動しているのか?スティーヴンには不明だ。現在と過去とを織り交ぜて物語は展開してゆく。
ロバート・ゴダード著「闇に浮かぶ絵」下、遂に終盤が訪れた。裁判で勝訴したジェイムズのその先に待っていたものは破滅という現実でした。終盤のプロットの展開は読者の予想を裏切り途轍もなく面白い結末でした。作者はまさに読ませる技をふんだんに盛り込み結末を用意したのでした。思えば人間の感情の全て、人生観、正義、憎悪、悪、絶望、希望、光、愛情、怨念すべてがこの小説にあるような気がします。
畠山健二著「本所おけら長屋」八、江戸は本所亀沢町にあるおけら長屋その住人、万造と松吉それに浪人の鉄斎を含め義理と人情で生きる住人を巻き込んで起こる騒動の数々を様々な角度から解決に導く江戸は人情物語。第一巻から八巻まで全て読破したが、懐かしさと読む面白さは後を引きまた読みたくなってしまう。著者の技量を感じさせる連載短編ものは絶品だ。
ロバート・ゴダード著「闇に浮かぶ絵」上、ダベノール家を中心に失踪した長兄と既に準男爵とした地位にいるヒューゴさらに彼らを取り巻く人間の増愛の醜い争いを描いている。上巻では少し冗長さが伴うが終盤にいよいよ法廷での闘争になる。果たして真実は?ここまでのプロットは至極単純明快だが、肉づけは恐ろしく多彩だ。
宇江佐真理著「雷桜」、江戸からほど近い瀬田山を望む山村に生を受けた游、幼児にして誘拐され森深く閉ざされた峡谷で育てられた父親は忍者らしき者だったという。図らずも游はある日実家、瀬田家に戻ってくる。物語は游を中心に江戸清水家の斎道徳川の殿様の十七男という男と游の兄助三郎との縁で邂逅を果たす。游は後に紀州五十五万国の頭首となる斉道の子を宿すことになる。情景を含めプロットも巧で江戸庶民の人情を底辺に人間関係のそこはとない刹那さを見事に描いている。
ロバート・ゴダード著「千尋の闇」下、いよいよ下巻にてプロットは錯綜し複雑化してゆく。ストラフォードの終生愛したエリザベスを巻き込みクシュナー一族との攻防さらにセリック、マーチンのメモワールを元に調査を依頼した南アメリカの富豪、実はサー・ジェラルドつまりエリザベスの元夫の息子だ、成り行きは錯綜を極めついにマーチンはセリックを殺害する。緻密なプロット上に配置された物語の進展はこれ以上ないといった面白さだ。
ロバート・ゴダール著「千尋の闇」上、著者の作品は過去にも読んだ覚えがあるが、今回の千尋の闇は上巻を読んだだけだが、相当面白い。プロットの優秀さは固より主人公マーティン元教師がふとしたことから元上院銀ストラフォードのメモワール(日記帳)の調査を依頼された。このメモワールに記載された事柄を立証をすべく奮闘する主人公の前に様々な事実が浮かび上がり疑念が次々と浮かびあがる。
P・G・ウッドハウス著「よりぬきウッドハウス Ⅰ」、ジーヴス及びウースターシリーズに先立つ短編集だ。ペッパーが登場する短編はのちにジーヴス・ウースターシリーズを彷彿とさせる。英国的ユーモアの世界は光彩を放ちセンスを伺い知ることができる。
畠山健二著「本所おけら長屋」七、おけら長屋の住人、万造と松吉、金太に島田鉄斎、大屋の徳兵衛と揃い踏みだ。ドタバタ劇は相変わらず続き、長屋の住人の心を一つにする団結力を持って次々と騒動を解決してゆく。貧乏と人情が行きかうおけら長屋の交流はいつでも読者を和ませさらに癒しさえ与えてくれる。
P・G・ウッドハウス著「ウースター家の掟」、ロンドンを離れワトキン邸を訪れたバーティとジーヴス、そこでバーティの友人の婚約を巡る様々な騒動に巻き込まれ窮地にに立たされたバーティを救うのは勿論執事のジーヴスだ。バーティのウースター家の掟が起こす騒動は次から次へと広がり奮闘してゆく二人の姿はまさに人間の信頼とは愛情とはを想起させまさにヤッホーだ。
シャンナ・スウェンドソン著「スーパーヒーローの秘密」、㈱魔法製作所シリーズの最新物だという。著者の作品は初めてだ。ニューヨークを舞台に繰り広げられる魔法会の格闘を描く。主人公は魔法の免疫者ケイティと魔法会のスーパーヒーローオーエンとの愛情と黒魔法との戦いの物語だ。奇抜なプロットには感服するが、何故か面白みに欠ける。
P・G・ウッドハウス著「サンキュー、ジーヴス」著者の最初のジーヴスものの長編作であるという。富豪の娘、ポーリン・ストーカーを回り旧友チャッフィーとウースターとの攻防を如才なく援護するジーヴスの手練手管、そしてバートラム・ウースターとの駆け引きはミュージカルの台詞の掛け合いの様相を呈し、読者に癒しと安ど感を与えてくれる何とも言い難い素晴らしさがある。
畑野智美著「感情8号線」、登場する4~5人の女性と男性との交友とさらに家庭生活を通して、男と女の生きざまを描く。働く女性の生活、人生観、周囲との交友関係と上司、恋人さらに結婚生活での妻と夫、感情と思考のお互いのズレを普通の暮らしの中に描きだしている。不安と大都会に住まう寂寥感が漂ってくるそんな物語だ。