日曜日, 4月 02, 2017

ジョン・ディクスン・カー著「三つの棺」カーの1930年代の作品で代表作だという本書は密室殺人の古典的価値を持つと言われている。読後に感ずる印象は、現代と違い少し時代差がつまり古いトリックだ。トリック自体もややこしいし現代の読者が諸手を挙げて賛成しかねる。主人公グリモーの過去、弟の因果を動機と位置づけて事件が起き自らも死を招く究極のトリックをフェル博士が看破する。


ドン・ウィンズロー著「失踪」アメリカ中西部の小さな町で幼い女の子ヘイリーが、失踪した。リンカーン署の刑事フランク・デッカーが捜査に中る。捜査陣の必死の追跡にも関わらず少女の行方は杳として知れなかった。少女の母親は離婚して独り身であり、デッカー刑事は必ず探して連れ戻すと約束する。このあたりが作者ドンらしいと思う。失踪から1年がたとうとする遂にデッカーは刑事の職を辞め捜査に専念する。青いコンチネンタルとともに追跡の旅が始まる。大都会ニューヨークにも足を向けた。

岡島二人著「クラインの壺」ミステリーとしては珍しい二人の作家の共著だという本書は違和感を感じさせないテンポの良さと平易な文体とモ相まって最後までページを繰らせる力がある。大学生の主人公はゲームの元ネタに応募したが落選しかしひょんなことからクラインというゲーム機器を開発するイプシロン・プロジェクトという会社に拾われ開発の動作確認に参加する。主人公上杉と梨沙という女性が参加している、ある日突然梨沙が会社に来なくなった。ここから謎を追及する探偵が始まる。

アガサ・クリスティー著「メソポタミアの殺人」イラクはバグダッド近郊、ヤリミヤ遺跡発掘現場で起こる連続殺人事件に登場する人物は考古学者のライドリー博士を始め、謎のラビイニ神父、直接物語の語り手つまり記述者としての看護婦と丁度良い加減とも言うべき人物配置と現代のミステリーにも十分通用する謎解きの核心は色あせていない。クリスティー作品の魅力が現代の通じる訳がある。
ヘイク・タルボット著「魔の淵」カナダは雪深い別荘での密室殺人事件、そこに集う1組の夫婦が殺害された。謎を事件の真相を解明すべく奮闘するが依然として謎は深まるばかりだ。遂に謎は解明された。しかも魔術師の如く巧妙なトリックを使って引き起こされた。あまりにも翻訳がぎこちなく読みずらい。世評とは一致しないミステリー小説だった。

雫井脩介著「火の粉」梶間家の周囲そして家族それぞれの人間の心理描写の上手さを実感する小説である。裁判長として勤務していた家長勲が退職し高台に5LDKの家を購入し家族6人で暮らすようになった。勲の祖母の介護は妻尋江が面倒みている。その大変さと祖母の娘満喜子との確執、さらに司法浪人としての雪江の夫俊郎と家族構成もバラエティに富んでいる。そこに隣人として武内なる勲が裁判で判決を下した男が移り住んでくる。ここから梶間家に次々と異変が起こる。絆で結ばれた家族も一度事件が持ち上がると簡単に崩壊していく危うさを感じさせる。ミステリー小説としてのプロットはやや平坦ではあるが、関係する人間の心理描写という意味で圧巻であり。別な意味での恐怖を感じさせる好著である。


畠山健二著「本所おけら長屋」四、万造、松吉そして八五郎と浪人島田鉄斎とおけら長屋に住む住人による騒動は多彩で面白い。おけら長屋コミュニティーの結束力はまさに天下一品だ。人助け、お節介で人情を基本とした様々な騒動の解決方法の根本がここにある。現代社会では既に失った江戸の庶民の心意気がここにある。気軽に読めて読後の清涼感はまた格別だ。

麻耶雄嵩著「神様ゲーム」小学生が探偵団を組織し鬼婆屋敷と呼ばれる廃屋を基地として活動する。神降市に連続して発生する猫殺しも背景を盛り上げる。そんな折に芳雄の友人が基地の井戸の中で死体となって発見される。転校生鈴木君は神様と呼ばれ彼が犯人を特定して天誅を下す。なんと芳雄が気お引くミチルという女の子だと。さらに共犯が事もあろうに芳雄を父だと。さらに天誅が下る。この小説こそミステリーだと思わせる何か不条理性を感じさせる。文体は読みづらいが、何故か惹かれる小説だ。

門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング7、遂に、東南アジアの小島アラス島での国際テロ集団VNとの戦闘が開始された。黒木隊長を始め高浜砂霧と120名ほどの隊員が急襲すつ手筈を整え血行した。そのジャングルでの凄まじい攻防の中、黒木豹介は絶命した。この痛快活劇シリーズは幕を閉じた。
畠山健二著「本所おけら長屋」三、江戸は本所おけら長屋で巻き上がる様々な厄介事を長屋の様々な住人が解決してゆく人情話は、日本人の心に住む何か温かいものを呼び起こしてくれる。事柄事に章を纏めたこのシリーズは、ふと疲れを感じたときに読むと何とも清々しい気持ちにさせてくれる。
門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング6]いよいよ国際テロ組織が迫りくる。黒木とSACの砦、悪四郎山中にも様々な陰と陽を交錯させた激烈な攻撃の最中インド洋に浮かぶ無人島への奇襲作成を実行する。黒木達連帯である。日本の総理、倉脇は元より米国大統領、先進各国首脳を交えての国際テロ組織との戦闘が開始されようとしている。