木曜日, 2月 02, 2017

中川健一著「日本人に贈る聖書ものがたり」下、アブラハムからイサクそしてヤコブへと続き、ヨセフの死を持って族長たちの巻が完結する。400年という長きに渡りエジプトに留まったへブル人・イスラエル人の苦難の歴史が書かれヤコブの遺言により後にイスラエルに12の部族が誕生しその後の物語へと続いてゆく。


中川健一著「日本人に贈る聖書ものがたり」上、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地エルサレムは各教共通の聖地である。 紀元前21世紀 アブラムからアブラハムへ後のイエスの家系となる物語であるが、作者の物語の展開の功名さが内容を細かく砕き面白さを失うことのないように進めるその手法はまさに聖書に精通した著者ならではのものではないかと思う。アブラハムとその妻サラそして神ヤハウェとアブラハムの息子イサクが妻リベカを娶るところで上巻は終わる。


門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング3」、遂に柳生一族の館にまで殺人者の触手が伸びてきた。さらに刀匠までも。またしても世界を震撼させる闇の殺人集団と黒木豹介・砂霧との対決は迫力抜群だ。混然一体となった闇の集団の素顔は依然として知れず、そんな中次々と事件が発生する。遂に、中国軍に召喚された黒木は軍空軍基地に降り立った。そこで待っていたのはまたもや殺人集団だった。著者の状況から最終の結論が出ないまま物語は完結。残念至極。


門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング2」、ヨーロッパはもとより日本と世界へと黒木豹介検事と高浜砂霧とのコンビが活躍する第二弾だ。強靭な肉体とマシンガンを操る黒木の前に次々と襲う困難に立ち向かう痛快活劇的サスペンスは一服の清涼剤的ドラマだ。次々と展開する暗闘はまさに圧巻であり著者の状況設定プロットに感服だ。


門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング1」、ヨーロッパはフランスを舞台に日本の政府総理大臣おも登場させ華麗な展開を繰り広げる壮大なドラマだ。政府公認の用心棒黒木豹介と高浜砂霧とフランスの刺客との激闘が遂にEC推進のドロール委員長が日本へ上陸し郡上八幡での死闘となった。今までの著者の作品は、大阪のヤクザを中心として世界だったが正直驚きを感じぜらるを得ない。2が楽しみだ。


畠田健一著「本所おけら長屋」二、おけら長屋に住む浪人鉄斎は東北は黒石藩の家臣だったが、今や江戸剣術道場の指南役で長屋の住人皆に信頼されている。この鉄斎の身の廻りで起こる数々の事件を通して住民皆が力を合わせ事件に立ち向かう。江戸庶民の生活や風情が様々な場面で伝わり気持ちの良い読後感を与えてくれる。


畠田健一著「本所おけら長屋」一、江戸はある長屋本所おけら長屋に住む住人との人情温まる交流をとおして今は無き義理と人情が交錯する風情を軽快な文体とともに描く。長屋に住む米屋の奉公人万造と酒屋の奉公人松吉が度々起こす騒動を住人皆で泣いて笑って解決する。


ドストエフスキー著「白痴」下巻、いよいよ公爵プーシュキンを取り巻く人々との確執は限度を知らずアグラーヤの奔放な性格と相まって翻弄される日々だ。公爵はこれらの人々との対話を通しても依然と彼自身の狂気の中の純粋無垢な性格は一向変化することなく癲癇をコントロールしながら対処して行く。この混乱の中、ナスターシャとの結婚を決めいよいよ式当日ラゴージンの手によりナスターシャとは連れ去られた。必死に探す公爵が遂にラゴージンの家で見たナスターシャの姿は既に骸となってベッドに横たわっていた。


ドストエフスキー著「白痴」上巻、主人公プーシュキン公爵の生い立ちとともにスイスからドイツを経てロシア・ペテルスブルクへ列車から降り立ったところから物語は始まる。スイスの療養所での五年間の月日を経て公爵の癲癇病も治りかけていた。列車でのラゴージンとの出会いにより、ナスターシャとの邂逅さらにエパンチン家の人々との出会いと公爵を巡るペテルスブルクでの様々な人々との出会いを果たす。ラスコリーニコフと同様公爵プーシュキンの純粋無垢な性格が人々にどんな結果を齎すか。


ジェフリー・ディーヴァー著「死を誘うロケ地」、ニューヨーク州北部の小さな町クリアリーでのロケハン探しの元映画監督ジョン・ペラムは、この町で様々な妨害に遭遇し友人まで失うこととなる。小さな町の巨悪との闘いを決意したペラムの活躍ついに麻薬の生産と密売組織に辿り着く。田舎町の住人とそこの生活感をまた空気を散りばめ物語は進んでいく。最後のどんでん返しは読者の想像を超えたものでもないが、軽快な文体とともに楽しめる作品だ。