金曜日, 12月 22, 2017

ジョン・ディクスン・カー著「皇帝のかぎ煙草入れ」、1940年代の作品でカーの代表作といわれる古典的ミステリーの名著だと。若くて美しい未亡人イヴを回り道路隔てた真向かいの家の主人モーリスが殺害される。前夫アトウッドが殺害された当夜イヴの家に入り込み殺害を目撃したと彼女に伝える。殺人事件の発生からイヴに嫌疑がかかり警察は遂に彼女を拘留する。イギリス人の心理学者キンロスが登場し様々な視点から犯罪を紐解き解決する。カーのこの小説にみるプロットさらに犯人がだれであるかの伏線を周到に用意し読者に挑戦する。まさに古典的名著だ。
黒川博行著「アニーの冷たい朝」、大阪府警シリーズだ。若い女性の扼殺連続殺人事件を追う大阪府警村木班、周辺警察署と協力してサイコパスを執拗に追う。犯人は殺した女性の遺体にドレスを着せ死姦する。物語は犯人と被害者そして警察捜査警部の各々の視点から語られ最後まで緊張状態を保ちつつ終局を迎える。
山本一力著「銀しゃり」、江戸中期幕府からの棄捐令により江戸市中は不景気の最中にあった。そんな中でも鮨職人として独立し店を持つまでになった新吉は全うな商売に勤しむ人情の解る人だった。江戸庶民の暮らしや人間関係そして人生をどう生きるか?を巧みな描写でもって読ませてくれる著者の力量に感服だ。
ダシール・ハメット著「マルタの鷹」、米国ミステリーのハードボイルド小説の始祖と讃えられ古典的名著と呼称される「マルタの鷹」。サンフランシスコに居を構える主人公の私立探偵スペードが依頼を受ける一件から物語は殺人を伴い展開する。黄金の彫像の鷹を巡る攻防に巻き込まれ絶対絶命のピンチをその才覚で切り抜ける映画化された希代の名著だが、今となっては通常のミステリーと変わらない。
池井戸潤著「最終退行」、著者の前歴である銀行マンとして表裏を知り尽くしたプロットの設定はまさに迫真だ。東京第一銀行羽田支店の副支店長である蓮沼を回り支店長さらに同期の銀行マン、愛人の行員との人間関係と組織としての銀行の旧態依然とした体質を細部まで描いている。会長である久遠の不正資金供与とマネーロンダリングを執拗に追及する蓮沼の正義感は圧巻だ。
山本一力著「深川黄表紙掛取り帖」、短編集だ。作者の書は2作目である。江戸は元禄時代の深川を舞台として起こる事件を題材に作者の透徹した人間観が随所に散見され物語の面白さ多少のミステリー性も加わりさらに読者を魅了する。主人公の蔵秀の取り巻きの人間たちの江戸深川庶民を生き生きと描く作者の力量は人間の狭小さを面白く描いている。
ジェイムズ・エルロイ著「ホワイトジャズ」、確か著者の本は読んだ覚えが有るのだが定かではない。今回のミステリーとかハードボイルドとかの範疇を超えた物語だ。そして著者の強烈な文体というべきか単語・短文の羅列は読者を引きずって止まない。ロスアンジェルスを舞台にしたLAPD(ロスアンジェルス市警)と殺人者、麻薬、密売、ポルノ、殺戮、買収とありとあらゆる悪がまかり通る市での抗争さらにLAPD内部での不正を不条理なまでの描写。主人公の警部補で弁護士のデイヴィッド・クラインの血まみれの抗争が読者を最後のページまで繰らせる。
クリスチナ・ブランド著「ジュゼベルの死」、40~50年代に活躍した女性作家のミステリーだ。英国の小劇場で発生した女性の殺人を契機にそこに居合わせたコックリル警部とスコットランドヤードの警部が追及する殺人事件が主なプロットだ。密室殺人を捜査する中で意外にも容疑者全員が自分が犯人だと名乗るという下りは斬新なプロットだ。結末はどんでん返しに近い意表を突く内容で新鮮だ。
山本一力著「赤絵の桜」、著者の作品は初めてだ。損料屋喜八郎始末控えシリーズ第二弾だという。江戸は深川を舞台に損料屋(レンタル業)を営む喜八郎を主人公に様々な事件を解決するといった江戸情緒と人情溢れる物語だ。本書は数編の短編から成っているが相互に関連しあっている。ミステリータッチの編も編まれていて普通に楽しめる。

黒川博行著「勁草」、オレオレ詐欺集団を追う大阪府警特殊詐欺班の刑事、集団は金主と受け子や役回りの若い衆を使い巧みに老人から金を毟り取る。この集団にヤクザが絡み事態は転々とし、遂に殺人事件が発生、刑事らは逃亡する殺人犯を追い沖縄へ。著者の軽妙なタッチの文体はこの書でも圧巻だ。

水曜日, 11月 08, 2017

アイラ・レヴィン著「死の接吻」、戦後アメリカミステリー界に燦然と登場した20歳代の稀有な新人作家が書いた「死の接吻」は衝撃を持って迎えられた作品でエドガーズ賞に輝いたと。今読んでもなんら古めかしさは無く新鮮だ。主人公の大学生バッドが恋人の妊娠を切っ掛けに殺人を犯してから始まるミステリーはこの小説以来何度もテーマに昇り多数の作家が書きあげている。打算的な青年の殺人、最後は自分自身を死に追いやる運命を作者はその心理状況からも見事に描写している。
鷹羽十九哉著「私が写楽だ」、著者の本は初めてだ。十返舎一九と江戸小娘頭脳明晰にして美人おりきが織りなす、数多怪事件を解決する痛快ミステリーだ。北斎やら多数の江戸の有名人を登場させ物語の面白さを増長させるその描写は著者ならではで、またプロットも各編ごとに素晴らしい。



2765
黒川博行著「繚乱」、大阪府警を退職した元デカ2人、伊達と堀内が競売屋に職を置きパチンコ店の物件に関わる調査を開始、その過程で殺人恐喝などヤクザが絡む複雑な糸を解して行くといった物語だ。ヤクザ、銀行関係者、元府警OB、新地のホステスとこれでもかという裏を抉り出す痛快なミステリーだ。元デカ伊達と堀内は何故か憎めない人間に描く著者の描写に感嘆。
エラリー・クイーン著「エジプト十字架の謎」、ある村の交差点で首なし磔死体が発見される。その死体はまさに大文字の「T」型をしており謎の殺人事件として登場しクイーンの興味を引くこととなる。捜査に従事したクイーンの元でさらなる連続首なし殺人事件が発生する。少し冗長性は否めないが卓越した推理プロットは古典的名著と呼ばれる著者の代表作だ。
松本清張著「黒川の手帳 下」、予備校のトップとの駆け引きを成功し料亭「梅村」の土地を手に入れたと思い銀座の大きな店を買い取る決意をした元子だったが、突然梅村の土地を手に入れることができなくなった。元子は窮地に立たされた。そして銀座の裏の世界の元に対する逆襲が練られ元子を潰しに罹ったのだ。著者の当時の銀座のバーを巡り蠢く闇のの世界を抉り、一人の女性の野望を描いた社会派然とした作品だった。
黒川博行著「てとろどときしん」、著者の初期の傑作短編集だ。どれも秀作で、読者を飽きさせない著者独特な簡潔にして迫力ある文章は軽快だ。すでにこの当時警察ミステリーの芽生えががあり、刑事のコンビの大阪弁を介しての絶妙ともいえる遣り取りはまさに大阪漫才をルーツに展開したものとみえる。
黒川博行著「疫病神」、「破門」に至る第一作目の作品である。二蝶会のイケイケのヤクザ桑原とフリーの自営業の二宮のコンビ第一作目だ。事は産業廃棄物場建設に伴うゴタゴタに巻き込まれる二人、ゼネコン、ヤクザの組対立するまた組とプレーヤーが続々と顔を揃えシノギを巡る攻防は熾烈だ。そんな物語の中でも桑原と二宮のそこはかとない人間の暖かさを上手く描写する作者の技量には感服。そして軽快で面白い。
松本清張著「黒川の手帳 上」、東京の銀行員の原口元子は、勤務先の銀行から大金をせしめて退社し銀座のママになった。所詮素人の水商売の経営では早晩息詰まる。次のターゲットが産婦人科医院長だ。産婦人科医院に勤務する院長の手のついた婦長から脱税の内容を聞き出し架空口座名義のリストを種に強請る。この手口で5千万円をせしめた。次のターゲットは医科大学専門の予備校のトップだ。
村上春樹著「騎士団長殺し 第2部」、ますます第二部になって物語は、観念イデアの世界に突入して行く。現実と非現実の境界があやふやになり条理と不条理がない交ぜになって混沌した世界の中で生を見出してゆく。自身の存在は不確かな不確実な世界を彷徨い苦悩する。人の人生とはそういったものかもしれない。存在を確かめる何かを求めて生きる人生とはそうなのだろうか?
今野敏著「欠落」、本書は警察小説である。警察小説といえば、黒川博行である。今回釧路空港で買い求めた書だ。誘拐事件が発生し人質交換要員として新人のSITの大石が出向く。さらに管内での殺人事件が発生本部が設置され地道な捜査が開始される。だが永として被害者の情報が引き出せない。そこに沖縄那覇での殺人事件さらに三鷹署内での殺人事件と連鎖情報が加わり、事件の様相が一変する。公安を管轄する警察庁からの警視正の捜査本部への派遣と事件は公安がらみと発展し宇田川巡査部長は通常の殺人事件でないと悟る。幕切れはあっけないが、通常の警察業務を管轄する捜査官らと公安との駆け引きを題材に物語が急展開してゆく。
黒川博行著「迅雷」、奇抜なプロットだ。ヤクザの組長を拉致誘拐するといったゴロツキ3人そして誘拐された組組織との果てしない攻防、騙しあい内容はシリアスだが、まるでユーモア小説を読んでいるようだ。作者の卓越した文体と表現の描写は読むものを最後のページまで繰らせる力を強く感じる。ほんとうに面白い。
高田郁著「あきない世傳金と銀 四」、5代目徳兵衛の突然の引退・隠居宣言により幸の運命は大きく変化することになる。惣二の書付により弟智蔵を六代目徳兵衛にとにより晴れて店主が決定し、徳兵衛こと智蔵は条件として幸を後添えとして希望し幸も承服することから如何せん商売に向いてない智蔵に代わり幸の五十鈴屋経営の手腕が次々と発揮されてゆく。
村上春樹著「騎士団長殺し 第1部」、著者の作品は大分よんでは来ている。今回の騎士団長殺しも例外なく素晴らしい作品に仕上がっている。36歳の画家として肖像画を描いて生活している青年の周りで、感情と理性、条理と不条理の狭間そして己の存在を確かめるような事柄が脈絡なく続く。希望や憧憬からか定かではないが騎士団長というメルヘンチックな妖精とでもいってもいいが現れる。彼を取り巻く様々な理解しながらできなに何か?に取り囲まれてゆくその過程は読み手の精神を高揚させ不連続な世界を彷徨する。
黒川博行著「燻り」、短編集だ。著者独特なプロットとそして軽妙なタッチで畳みかける迫力はまさに黒川作品そのものだ。現実味のある事件とその裏にある人間の欲望や羨望そして人生の悲哀すべての要素を描き出している著者の核心がここにある。
畠山健二著「本所おけら長屋 九、相変わらずおけら長屋の面々、松造、万吉、鉄斎、お染を交えた人情溢れる江戸っ子の出しゃばりが騒動を起こし無事涙を伴って解決するといった筋書きだ。日本人の心の片隅に住まう人情を擽る類まれなプロットは尽きることを知らない。

月曜日, 10月 02, 2017

黒川博行著「絵が殺した」、画家、画商、画廊、美術ジャーナリストといった美術界を巡る殺人事件だ。大阪府警捜査一課、吉永、小沢刑事コンビが犯人を執拗に追う。一見関連がなさそうな殺人事件が発生。捜査を進めるうちに関連が見えてくる。作者のプロットは実に巧みだ。大阪弁の気取らない表現といい、軽快な文章といいすっかり著者のフアンになってしまった。

東野圭吾著「卒業」、6人の卒業を馬路かに控えた大学生の間に起こる殺人事件、青春ミステリーだ。ある日女子学生祥子がアパートで死体となって発見された。自殺他殺両面から警察の捜査が始まったがその動機は掴めなかった。同じ仲間の女子学生波香が茶会の席で服毒による死を迎え緊張しながらも必死に原因を探ろうとする加賀と佐都子。。プロットしては面白みがなく描写も冗長さがあるが、著者ならではの物理学的トリックや青春の群像を描き人間性も描写している。
坂口安吾著「不連続殺人事件」、昭和20年代を舞台にした著者初のミステリーだという。田舎の旧家豪邸に招待された面々の間で起こる連続殺人事件、招待者の中に巨勢博士という探偵好きな人物がその殺人事件を解明するといった。人間の描写やプロットからすると今現在でも十分通用する古典的名著じゃないかと。
貴志祐介著「鍵のかかった部屋」、四篇の短編集だ。榎本径と美人弁護士青砥順子の二人で密室殺人の謎を解明するといったミステリーだ。トリックは意表を突くものが多く榎本の物理学を応用した解明はほーと何故か納得してしまう。気軽に電車の中で読むのに最適な一冊だ。


ジョセフィン・テイ著「時の娘」、病院へ入院中のスコトランドヤードの刑事グラントは退屈紛れに歴史の本でも読もうかと。英国史それも15世紀末のリチャード三世の時代の彼が幼い甥二人の殺害をしたという真実を確かめるべく歴史書を読むことに、グラントの友人から紹介されたアメリカ生まれの青年キャラダインと意気投合しリチャード三世の歴史的殺害事件の真実に迫る。
黒川博行著「二度のお別れ」、大阪市内に銀行強盗事件が発生する。黒さんマメさん黒マメ両刑事のコンビを初め府警捜査が捜査に当たる。犯人からの脅迫状は元より電話で翻弄される刑事と犯人の遣り取りは、軽快な文章と共にスピード感を伴って最終章へと。しかし事件は迷宮入りとなって3年が経過した。ある日黒さんの自宅に犯人から電話が。。。
黒川博行著「封印」、元プロボクサー酒井が世話になっているパチンコ代理業津村が、誘拐された。大阪と京都のヤクザの果し合い、そこに警察官が絡み合う。酒井は一人津村を探してヤクザと渡り合う。軽妙なタッチの著者の文章は一気に週末へ。プロットといい文章といい当に著者の独壇場だ。
道尾秀介著「鬼の跫音」、オカルト的でありミステリアスな趣があり多様なイメージを抱かせる短編集だ。各短編は独立してはいるが、底辺にある人間の懐疑や本性を際立たせる巧妙なトリックとプロットが光る。何気ない日常に潜む人間の本性は底知れぬ恐ろしさ恐怖を感じさせてくれる類をみない小説だ。
黒川博行著「カウント・プラン」、著者の初期の短編集である。現代社会の歪と発生すると思われる事件を捜査側と犯人側と二手に分けて記述してゆく。著者ならではの大阪での警察捜査側の刑事と犯人のやり取りは従前のもので、後の大作にも繋がる兆しが見える。


綾辻行人著「時計館の殺人 下」、殺害は連続的に発生し恐怖に戸惑う時計館の滞在者達。時計館という幻想のフィクションの建築物ではあるが、この小説を読み進めて行くと、何故か実際にある建物のように思えてしまう。死者の怨念とも言うべき古我倫典の溺愛した娘永遠(とわ)その情念が建物を作り、そこに住まう者達の上に災禍を齎す。人間の奥深く持つ内在的な情愛と怨念を物語に見た。

綾辻行人著「時計館の殺人 上」、著名な建築家中村清二なる人物が設計したという異風な洋館が鎌倉の森の中にあるという。交霊会という名目で集う数人の者たちがやがて次々と殺害されてゆく。この館の忌まわしい過去に足を踏み入れることになった者たちへの不幸が襲う。


高野和明著「13階段」、現役刑務官南郷と仮釈放の三上純一との死刑囚の樹原の復権に向けて捜査を開始するという現実離れした設定で物語は開始する。人間にとって死、その恐怖や裁判制度での死刑という究極の選択ともいうべき極限状況をどう捉えるか?南郷らの捜査は殺人が発生した千葉県は中港郡に居を構え執拗な捜査を続ける。保護司の強請というあり得ない事実を掴み、捜査を依頼した本人が強請られていたという更に純一が犯した障害致死の被害者の父親もからんでいたというプロットには感服。江戸柄乱歩賞に輝いた本書はまさにミステリー醍醐味を十分堪能させてくれる好著だ。


吉村昭著「漂流」、コメなどを運ぶ運搬船が、強風に晒され漂流の上、激浪の揉まれて船は破壊され着いた島は無人島であった。四国土佐からの漂着した人々の無人島での生活が始まる。月日が経つうちに絶望の淵へと追いやられ生きる希望を喪失し病に倒れる者、悲観し自殺する者と悲惨な状況になってゆく。その中で長平という人物が、絶海の孤島で自然に寄り添い神仏を信じ生きるとうことに専念して行く姿は人間の信じ難い生への執着を思わせる。さらに孤島には大阪船、薩州船と流れ着き絶海の孤島での厳しい生活が始まり漂流民同士の絆、そして最後に流木を利用して船を作り八丈島に寄港し本国に帰着するという物語だ。


黒川博行著「左手首」、本書は、七編からなる短編集だ。黒川ワールドと表現していいだろう凝縮された世界が読者を魅了する。事件の裏にある緻密な取材と奇想天外でもないが面白いプロットそして登場人物たちの何故か憎めない悲哀を伴う人生、これらを軽妙なタッチで描く著者独自の世界観・人生観を表現している。
A・ルースルンド&S・トウンベリ著「熊と踊れ 下」、スウェーデンで、実際に発生した襲撃・銀行強盗事件を題材にしたというフィクションだそうだ。この物語の犯人の生い立ちつまり家族との絆をバックグラウンドを強く意識させる。そんなにも裕福でない家庭、厳格にして暴力的父親イヴァンと母マリーの下で育った3人の兄弟の成長過程での精神状況を背景に軍の武器庫から強盗事件さらに現金輸送車襲撃と続く9件もの銀行強盗の裏に隠れた真実を明かす。

土曜日, 9月 02, 2017

麻耶雄高著「貴族探偵」、殺人トリックやプロットともにコミック的であり、しかも主人公の探偵は貴族探偵という推理は使用人任せという奇抜なアイディアは作者ならではの突飛な発想だ。気軽に読める頭を休ませるためのコミック探偵ものだ。
アガサ・クリスティー著「ホロー荘の殺人」、ホロー荘に集う数人の客人の中に医師のジョンとその妻ガーダがいた。そして医師がプールで死体となって浮かんでいた。そのプールを見下ろしてリボルバーを持った妻がいた。この殺人事件を追うグリンジ警部と近くの別荘に来ていたポアロ、捜査は混沌として登場人物の姿が詳細に描かれていく。この事件の真相は意外な結末となった。絡み合う愛憎、人生に失望しながら愛を獲得する青年、病院でジョン医師と共に奇病と戦うバーさん、愛する人を見失う芸術家、人生の様々なシチエーションを描いたミステリー。
A・ルースルンド&S・トウンベリ著「熊と踊れ 下」、スウェーデンで、実際に発生した襲撃・銀行強盗事件を題材にしたというフィクションだそうだ。この物語の犯人の生い立ちつまり家族との絆をバックグラウンドを強く意識させる。そんなにも裕福でない家庭、厳格にして暴力的父親イヴァンと母マリーの下で育った3人の兄弟の成長過程での精神状況を背景に軍の武器庫から強盗事件さらに現金輸送車襲撃と続く9件もの銀行強盗の裏に隠れた真実を明かす。
A・ルースルンド&S・トウンベリ著「熊と踊れ 上」、スウェーデンのストックホルムで貧困家庭で暴力を振るう父を持った兄弟3人が、現金輸送車を襲い強奪する。さらに銀行強盗を1件実行し多額の現金を強奪、ブロンクス警部の執拗な捜査が続く中で2件目の銀行強盗事件が発生さらに中央駅のロッカーに爆弾を仕掛けた。その爆弾が爆発したという。スウェーデン史上稀にみる凶悪な銀行強盗事件を描きながら3人の兄弟愛と父親との関係を描き単なるミステリーと一線を画した好著だ。
松岡圭祐著「黄沙の籠城 下」、いよいよ籠城も佳境に入り戦闘は激しさを増し死者も膨大となった。東交民巷も陥落寸前の状況となった。そんな状況の中で日本軍の柴中佐、櫻井伍長の活躍は日本人の心、精神として後日世界に知らしめることとなった。 東交民巷という閉じた狭隘な世界は、そのまま現代の世界に通ずるのではないか?日本が日本人が果たす役割とは精神的支柱を認識し世界に対しいて平等に博愛の精神を持って正道を歩むことかも知れない。
松岡圭祐著「黄沙の籠城 上」、第一次世界大戦前の中国北京、西太后が支配する北京その中に東交民巷という城壁に囲まれた外国軍隊の居留地があった。西太后の権力が衰え無頼の黄巾達の大群に包囲され防衛を余儀なくされる。 東交民巷を防衛すべく各国の兵士が最前線で戦闘に当たる。櫻井伍長を中心に柴中佐各国の軍幹部らとの交流を描く。
アガサ・クリスティー著「邪悪の家」、休暇中のポアロが保養地のホテルで出会った事件を元に彼の灰色の脳細胞が忽然と動き出す。名前が同じというヒントを元に殺人事件を組み立てる著者の見事なプロットには感心するしかない。確かに冗長性は否めないものの素晴らしいミステリーだ。
藤沢周平著「一茶」、俳人一茶の人生を描いた書だ。赤貧の中でも執拗に句を作り続ける情熱は何処から来るのか。生涯を貧困と隣り合わせに暮らした一茶はまた生涯二万句を作ったといわれる奇人天才だ。江戸から長野は信濃町の辺鄙な雪深い村に余生を求めた一茶、著者が書く一茶像は世間一般人の一茶そのものでその人生の機微が伺われて、人生とは?と考えさせらる物語だ。
堂場舜一著「Sの継承 下」、逸る革命戦士を押しとどめようと警察官工藤と連携し国重は思いとどまった。それから50年経ち今日本で一人の青年天野が果敢に革命に挑戦したS号名乗る毒ガスを手に。50年前の当時のメンバーだった松島の指導の下に彼天野は革命を決意した。警視庁との対決結局革命は成功せず捕縛された。日本の議会制民主主義への疑問から革命というプロットを導きだし警察ミステリーともとれるシナリオは作者の発想の豊かさの証明か。

堂場舜一著「Sの継承 上」、戦後満州からの引揚者国重は親父が儲けた財産を元に複数の事業をこなしている。戦中から戦後この国日本を変えなければ、という気概を持ち続けている。そんな中で、七の会を発足させる。場所は赤城山の麓、厳選したメンバー七名からなる革命を実行する面々だ。議会制民主主義を倒し新たな政府を作ろうとする正に革命だ。その為の強力な武器、戦中日本軍が開発をした毒薬S号と異名を持つ劇薬を作り脅しに使うという計画だ。

金曜日, 8月 04, 2017

竹本健治著「涙香迷宮」、黒岩涙香を主題に殺人ミステリーを組み立てるという作者の奇抜な発想には驚きのほかない。そもそも黒岩涙香なる作家は日本のミステリー作家の草分け的存在ということくらいしか覚えていない。しかしこの著者による涙香の多彩ぶりは脅威ですらある。こんなミステリーを書く著者に乾杯だ。
川博行著「国境 下」、中国経由で北朝鮮に渡った桑原と二宮は遂に趙を捕まえて吐かせた。詐欺の絡繰りの全貌が解った。二人は帰国して詐欺の首謀者らを次々と襲い金を奪い返すべく。そんな二人は思わぬ展開で決着が付き一件落着となる。まさにミステリーというかエンターテイメント性たっぷりの小説だ。作者に脱帽、面白い。
黒川博行著「国境 上」、ヤクザ組筋から多額の金額を持って逃亡した趙を追って、お馴染み二蝶会桑原と建設コンサルの二宮が趙を追って北朝鮮へ。相変わらずの桑原と二宮の掛け合い漫才的会話は仄々として面白い。一回目の平壌行きから何の収穫も無いまま帰国した二人は桑原の密入国の意思の元に再び中国経由で豆満江を渡り北朝鮮へ。
シェンナ・スウェンドソン「おせっかいなゴッドマザー」、多分三作目だと思うが、魔法製作所シリーズを読んだ。主人公ケイティー・チャンドラはテキサスからニューヨークに出て、ふとしたきっかえでMSI魔法製作所という会社に勤務することになった。この会社を退社したイドリスを中心とした黒魔術軍団との闘う中でケイティーは上司オウエンとのとの恋に落ちる。ニューヨークを舞台に恋愛・ロマンスと魔法界の闘争を通して主人公ケイティーの成長を見ることができるまさにファンタジーであり著者のイマジネーションの凄さを実感する。
畠山健二著「スプラッシュマンション」、葛飾区新小岩にあるマンションその管理組合の理事長を務める高倉、組合結成後4年も理事長を務めている。ある日理事長の息子と住人の間でふろ場での事件が持ち上がる。そして組合の理事長選を控え物語は急展開に。高倉と管理を任された会社の課長代理小林を洗うべく住人3人の飲み仲間が立ち上がり事態は思わぬ展開へと。人生悲喜こもごもを書いたら著者の右にでるものがないくらいだ。後に続く「本所おけら長屋」を彷彿とさせる見事なプロットは絶品だ。
黒川博行著「切断」、警察ミステリー分類に入るのだろうか?連続殺人事件が発生し、被害者は前に殺害された体の一部パーツを差し込まれるという異常殺人事件だ。この小説の根底にある復讐は凄まじいものがある。全身全霊でもって復讐する。異常性愛者による犯行だ。著者の書の中では刑事たちの警戒な大阪弁のやり取りに惹かれる部分が多々あるが、今回は無機質だ。
水野和夫著「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」、私は経済学者として著者は我国のトップランナーだと思っている。久々に著者の書を読んだ。過去の歴史を具に検証し今後の未来世界経済並びに日本の生末を提言する。化石燃料を大量に消費し、より遠くへ・より速く・より合理的にと進めてきた20世紀からの現状を変えるべきだと。ゼロ金利政策こそが現状資本主義の末期的な現象で、今後転換してゆくべきだと。プライマリーバランスを早期に達成し、緩やかにゆっくりと変換してゆくべきだと。
月村了衛著「御子神典膳」、江戸時代の剣豪と呼ばれた御子神典膳そして伊藤一刀斎を師と仰ぐ典膳の兄者、小野前鬼これら二人の剣豪の中に城を追われた澪姫と少将小弥太との逃避行さらに彼らを守ろうとする地の豪者との凄まじい武闘が繰り広げられる。中でも黒蓑兄弟右京、左京次の魔剣に包囲され絶対絶命の中で典膳こと前鬼の剣が光る。善と悪と人の人生の生き方まで問う本書はプロットといい登場人物の多彩な顔触れといい絶妙だ。
高田郁著「あきない世傳 金と銀 三」、江戸出店の大志を抱き商売に奔騰する五代目徳兵衛を陰ながら支える幸、江州波村に目星を付け浜糸と呼ばれる生糸を平織にし羽二重の反物として売り出そうと画策する徳兵衛しかし両替商の倒産から波村の人々の反感を買い窮地に立たされた時幸の言動が五十鈴屋を救う。貪欲に知識を求め商いを心から愛してやまない幸の人生航路は今後如何に。
高田郁著「あきない世傳 金と銀 二」、四代目徳兵衛の妻、御寮さんとして五十鈴屋に女衆から奥向きに立場を変えた幸だった。徳兵衛の相も変らぬ廓通いは呉服商仲間の顰蹙を買い五十鈴屋の暖簾を汚し呆け汚す毎日だった。そんな環境の中でも商いに対する知識を貪欲に追い求める幸だった。そして突然悲劇は起こった。廓からの帰り道四代目徳兵衛が川に落ち石垣に当たり呆気なく死を遂げた。四打目頭首を亡くし当然の如く縁談が進んでた次男惣二に白羽の矢が立った。惣二の頭首を継ぐ条件として福に提示したのは幸との縁談であった。
高田郁著「あきない世傳 金と銀」、片田舎の津門村で生を受けた幸、間借りで塾を営む学者を父に持ち大好きな兄そしていもと結と暮らす日々に暗雲が立ち込め、幸の身に不幸の渦が押し寄せて来た。兄また父と早逝し仕方なく大阪天満の呉服商五十鈴屋に奉公に上がることとなった幸。そこで大阪商人の生きざまを学び日々暮らす幸の姿があった。
P・G・ウッドハウス著「ジーヴスと封建精神」、今回は長編ものである。バーティーはジーヴスと共にダリア叔母さんを訪ねる。この家で巻き起こる様々な悲喜こもごもというべきか騒動がおこる。登場する各人物がまた世間を逸脱した道化とも称される愛すべき者たちである。作者が行間に込める何とも言えない含みを味わいながら、ウースターとジーヴスのやり取りを読むのは幸福だ。
門田泰明著「浮世絵宗次 天華の剣 下」、大老酒井の元、闇集団「葵」転じて「白夜」の影が宗次の身辺に出没することとなった。ひょんなことから親しみを覚えたあ剣客式部蔵人なる人物がその後「白夜」の長官となり浮世絵師宗次こと徳川宗徳と決闘をすることになる。無事危難を免れた宗次が最後に奈良の西城家おお婆様を迎えに保土谷宿まで美幸ととみに足を延ばし婆様の歓迎し、その席で婚儀となりめでたしめでたしで浮世絵師宗次物語は完となった。
門田泰明著「浮世絵宗次 天華の剣 上」、徳川幕府将軍家綱の体調不良の元、大老酒井と堀田との後継争いに端を発する江戸市中、幕府お抱えの闇情報集団「白夜」は浮世絵宗次の知る旗本西城山城守貞頼の暗殺を画策しすんでのところで宗次によって事なきを得た。浮世絵師宗次の住む鎌倉河岸八軒長屋のチヨと娘二人との交流さらに江戸庶民の日々の暮らしをふんだんに盛り込み物語は展開する。そして遂に闇集団の手が宗次に迫りくる。
ジェフリー・ディーヴァー著「ゴースト・スナイパー」、著者ディーヴァーは、ほぼ全作読んでいるが、いつ読んでもプロットの巧みさにわくわくさせられる。今回本作は、バハマで殺害された活動家モレノの死を回りあろうことかバハマまで遠征に行くリンカーン・ライムを描き執拗な捜査が開始される。捜査資料及び証拠物件が乏しい中で必死の捜査にもかかわらず、次々と殺人事件が発生する。それもニューヨークで。大どんでん返しはないものの面白く最後まで頁を繰らせる力量は著者なれではのものだ。

日曜日, 7月 02, 2017

黒川博行著「蒼煌」、日本画家の京都画壇の絵師、室生が芸術会員選挙に立候補する。老画商殿村の参謀を得て金をばらまきながら選挙選を戦う。東京画談の画家や画商さらに政治家まで登場させ黒々とした腐敗の構図を大胆に描く。本物かと思うほどの迫力だ。室生の人間性や彼を取り巻く画家、画商と様々な状況をプロットしていて面白い。
ジェフリー・ディーヴァー著「扇動者」、クラブでそう大勢の人の集合する場所を狙い群集心理にかこつけてパニックを起こさせる未詳殺人犯はキネシスク専門家キャサリン・ダンスに挑戦的に次々と事件を起こす。例によってマイケル・オニールとの共同捜査により犯人を追い詰めてゆく。ダンスの家庭内子供との関係やジョン・ポーリングとの恋愛関係と伏線を用意し長編ミステリーに仕上がっている。だが、これまでのディーヴァーを読んできた者にとって少し不満だ。最終盤のローラコースター的どんでん返しが見られない。未詳殺人犯の拘束も何故か感動がない。
黒川博行著「海の稜線」、船舶事故を主題に殺人事件を捜査する大阪府警の深町班、3人の刑事中に東京から東大出のキャリア荻原警部補片や生粋の大阪人の総田こと総長と文田ことブンさんが執拗に犯人を追う。高速道路での車両の炎上で2人の男女が丸焦げになる事件が発生した。さらにアパートでの男女死体と事件は重なり迷宮の中へ。だがひょんなことから高速道路で炎上した死体の女性から端緒を得て事件は大きく展開する。大阪人と東京人との文化の対比やら軽快なやりとりと読者を楽しませくれる著者の作品はプロットとともに素晴らしい。
黒川博行著「ドアの向こうに」、河川に埋もれた男性の死体が発見された。直後アパートでの青酸カリによる服毒死と女性の自殺、大阪府警の刑事3人総長と文田そして五十嵐犯人追及捜査は難航するが突破口を発見し殺人犯との知恵比べそして逮捕へと。府警3人の刑事のやりとち、それぞれの家族も絡ませた大阪人特有の何気ない会話がまた人間味があってほっこりと面白い。警察捜査ミステリーとしては出色の出来栄えだ。

中村裕木子著「英語は3語で伝わります」、小中学校の英語教育からこんな先生がいたら?と思わずにはいられない。それほど明快で衝撃的だ。SVO、SV、SCという文法構文による英会話、英語文章作成という単純明快な理論は非常に解りやすく衝撃的だ。複雑なイディオムは使用しない、受動態も使用しなくても表現できるなど画期的な教育法、現況法を説いている。頭で考える日本語を如何に平易な英語表現に変換できるかのヒントがこの本には満載だ。

月村了衛著「機龍警察」、武器闇市場、密輸をするグループはベトナム人、ロシア人そして中国人と、この武器商人を追跡し戦闘を開始する機能警察。龍機兵を擁する警察庁機動捜査隊特装部、沖津部長中心に優秀な人材を寄せ集めたエリート集団だ。戦闘を描く迫力は絶品だ。
月村了衛著「機能警察 暗黒市場」、ユーリ・オズノフ元警部のロシア時代の回想から始まる武器の密輸に関するマヒアと世界の武器商人の暗躍、著者の渾身の物語だ。人型ロボットの兵器と金、政治が絡む暗黒市場を見事に描いている。ロシア捜査員時代の友人、人間関係、父と息子さらに上司とそれら人間関係を描きつつ物語は迫真の状況を見事に描き出す戦場を見事に執拗に描く。傑作だ。
月村了衛著「機忍兵 零牙」、鷹千代と真名姫を託された光牙の忍者達、山岳を超え部族の元へ送り届ける任務。道中、骸魔悪徳忍者との壮絶なバトル死闘を繰り広げ双方ともに死者を出しながら戦い続ける。この忍者戦闘記なる小説の作者の発想といいプロットといい類まれなる才能を感じぜずにいられない。ファンタジックミステリーとでも称すべき時を過ごせる小説だ。
サンドローネ・ダツィエーリ著「パードレはそこにいる」下、遂に紆余曲折ながら、犯人パードレに迫りつつダンテとコロンバの執拗な捜査が続く。警察にも追走され状況を的確に判断しながら逃走する二人だが遂に魔の手パードレを追い詰めた。病理学者でありイタリアの権威をかさに着た博士がパードレの正体だった。読者を引き付け一気に最終頁を繰らせるサイコ的ミステリーサスペンとして一級品だ。
梅原猛著「親鸞四つの謎を解く」、著者といえば、若かりし頃「知的生産の技術」岩波新書であったろうか印象に残っている。親鸞については浄土真宗の開祖といわれ、比叡山延暦寺にも訪ねたが、五木寛之の小説物を読んだだけであった。今回、書店でその題名と著者名を見て購入した、内容は正に学術的で詳細に親鸞その人に迫る文学的あるいはミステリーと言っても過言ではない迫力がある。

サンドローネ・ダツィエーリ著「パードレはそこにいる」上、幼くして誘拐拉致されサイロでの数十年間の後に失踪捜索コンサルタントとなったダンテと警察機動隊副隊長の女性コロンバとの合同捜査をメインに女性殺害及び男の子誘拐事件を追跡する物語だ。二人の過去を抉り出しお互いに関係を深め理解しあう過程を描きつつ事件に核心に近づいていく。
月村了衛著「機能警察 未亡旅団」、チェチェン共和国から日本へ侵入した女性(子供含む)国際テロ集団、黒い未亡人このテロ集団と日本警察の各部署が総力を挙げて戦う。作者の著作物は初めてだ。物語に緊張感があり生温い警察小説は異なりプロット、警察内部の人間関係、議員さえも引っ張り出す、さらにテロ集団の少女カティアとの魂の交信どれをとっても一級品だ。
シャンナ・スウエンドソン著「ニューヨークの魔法使い」、テキサスの田舎町の農業用肥料販売店で育った純粋無垢な女性、ケイティ・チャンドラー友人達に探して貰った仕事は退屈で嫌な上司の下で働かざるを得ない、そんなある日求人メールを見て応募し転職に成功しかしそこは魔法製品を開発販売する会社MSI社だった。ケイティーの日常は大都会ニューヨークで大きく変貌する。魔法、魔術の世界に身を浸しひたすら戦う彼女26才の女性の葛藤と彼女を取り巻く友人たちの温かくもあり面白可笑しい日常を上手く描いている。
松岡圭祐著「水鏡推理Ⅱ」、FOV人口血管の発明による文科省のタスクフォース内に勤務する水鏡瑞希、彼女の小学校時代の親友如月智美がイギリスの有名科学雑誌にその人口血管が紹介され一躍脚光を浴びるが、不信に思った水鏡瑞希が全力で解明へと突き進む。研究捏造をテーマにまたその調査に臨む文科省のタスクフォース内の人間関係や研究者如月らの補助金欲しさの物欲に根底がある研究捏造とさらにインド人の学者を登場させ最終決着を迎える。人間ドラマを主体にミステリーとしてのプロットは想像を絶する面白さがある。
松岡圭祐著「水鏡推理」、文科省の管轄のタスクフォース、研究費を頂戴すべく捏造や不正を暴く特別な部署である、その課に二人の職員が配置された一人は水鏡瑞希と沢田翔馬だ。二人とも一般事務官だ。理系ミステリーと痛快さと面白さ瑞希が完全と不正に対して臨む痛快さが読みどころである。東野圭吾作品にも見られるが、こちらはもっと科学的で現代的課題を提供している。

木曜日, 6月 01, 2017

ロバート・ゴダード著「隠し絵の囚人」下、物語は第二次世界大戦前の1940年代と現代の間を行きつ戻りつエルドリッチ・スワンの行動と人生をまた叔父であるスティーヴン・スワンとの人生行路をたどってゆく。ピカソの贋作を元にサスペンス展開を予想したが、案に図らず両スワンの苦悩、絶望と恋愛、人間的愛情を豊富に散りばめた作品であった。
ロバート・ゴダード著「隠し絵の囚人」上、スティーヴンは叔父がまだ生きていることを知らされる。叔父の過去第二次世界大戦前後の収監され獄中での生活の過去、さらにピカソの贋作にかかわる出来事、叔父スワンがなにを考え行動しているのか?スティーヴンには不明だ。現在と過去とを織り交ぜて物語は展開してゆく。
ロバート・ゴダード著「闇に浮かぶ絵」下、遂に終盤が訪れた。裁判で勝訴したジェイムズのその先に待っていたものは破滅という現実でした。終盤のプロットの展開は読者の予想を裏切り途轍もなく面白い結末でした。作者はまさに読ませる技をふんだんに盛り込み結末を用意したのでした。思えば人間の感情の全て、人生観、正義、憎悪、悪、絶望、希望、光、愛情、怨念すべてがこの小説にあるような気がします。
畠山健二著「本所おけら長屋」八、江戸は本所亀沢町にあるおけら長屋その住人、万造と松吉それに浪人の鉄斎を含め義理と人情で生きる住人を巻き込んで起こる騒動の数々を様々な角度から解決に導く江戸は人情物語。第一巻から八巻まで全て読破したが、懐かしさと読む面白さは後を引きまた読みたくなってしまう。著者の技量を感じさせる連載短編ものは絶品だ。
ロバート・ゴダード著「闇に浮かぶ絵」上、ダベノール家を中心に失踪した長兄と既に準男爵とした地位にいるヒューゴさらに彼らを取り巻く人間の増愛の醜い争いを描いている。上巻では少し冗長さが伴うが終盤にいよいよ法廷での闘争になる。果たして真実は?ここまでのプロットは至極単純明快だが、肉づけは恐ろしく多彩だ。
宇江佐真理著「雷桜」、江戸からほど近い瀬田山を望む山村に生を受けた游、幼児にして誘拐され森深く閉ざされた峡谷で育てられた父親は忍者らしき者だったという。図らずも游はある日実家、瀬田家に戻ってくる。物語は游を中心に江戸清水家の斎道徳川の殿様の十七男という男と游の兄助三郎との縁で邂逅を果たす。游は後に紀州五十五万国の頭首となる斉道の子を宿すことになる。情景を含めプロットも巧で江戸庶民の人情を底辺に人間関係のそこはとない刹那さを見事に描いている。
ロバート・ゴダード著「千尋の闇」下、いよいよ下巻にてプロットは錯綜し複雑化してゆく。ストラフォードの終生愛したエリザベスを巻き込みクシュナー一族との攻防さらにセリック、マーチンのメモワールを元に調査を依頼した南アメリカの富豪、実はサー・ジェラルドつまりエリザベスの元夫の息子だ、成り行きは錯綜を極めついにマーチンはセリックを殺害する。緻密なプロット上に配置された物語の進展はこれ以上ないといった面白さだ。
ロバート・ゴダール著「千尋の闇」上、著者の作品は過去にも読んだ覚えがあるが、今回の千尋の闇は上巻を読んだだけだが、相当面白い。プロットの優秀さは固より主人公マーティン元教師がふとしたことから元上院銀ストラフォードのメモワール(日記帳)の調査を依頼された。このメモワールに記載された事柄を立証をすべく奮闘する主人公の前に様々な事実が浮かび上がり疑念が次々と浮かびあがる。
P・G・ウッドハウス著「よりぬきウッドハウス Ⅰ」、ジーヴス及びウースターシリーズに先立つ短編集だ。ペッパーが登場する短編はのちにジーヴス・ウースターシリーズを彷彿とさせる。英国的ユーモアの世界は光彩を放ちセンスを伺い知ることができる。
畠山健二著「本所おけら長屋」七、おけら長屋の住人、万造と松吉、金太に島田鉄斎、大屋の徳兵衛と揃い踏みだ。ドタバタ劇は相変わらず続き、長屋の住人の心を一つにする団結力を持って次々と騒動を解決してゆく。貧乏と人情が行きかうおけら長屋の交流はいつでも読者を和ませさらに癒しさえ与えてくれる。
P・G・ウッドハウス著「ウースター家の掟」、ロンドンを離れワトキン邸を訪れたバーティとジーヴス、そこでバーティの友人の婚約を巡る様々な騒動に巻き込まれ窮地にに立たされたバーティを救うのは勿論執事のジーヴスだ。バーティのウースター家の掟が起こす騒動は次から次へと広がり奮闘してゆく二人の姿はまさに人間の信頼とは愛情とはを想起させまさにヤッホーだ。
シャンナ・スウェンドソン著「スーパーヒーローの秘密」、㈱魔法製作所シリーズの最新物だという。著者の作品は初めてだ。ニューヨークを舞台に繰り広げられる魔法会の格闘を描く。主人公は魔法の免疫者ケイティと魔法会のスーパーヒーローオーエンとの愛情と黒魔法との戦いの物語だ。奇抜なプロットには感服するが、何故か面白みに欠ける。
P・G・ウッドハウス著「サンキュー、ジーヴス」著者の最初のジーヴスものの長編作であるという。富豪の娘、ポーリン・ストーカーを回り旧友チャッフィーとウースターとの攻防を如才なく援護するジーヴスの手練手管、そしてバートラム・ウースターとの駆け引きはミュージカルの台詞の掛け合いの様相を呈し、読者に癒しと安ど感を与えてくれる何とも言い難い素晴らしさがある。
畑野智美著「感情8号線」、登場する4~5人の女性と男性との交友とさらに家庭生活を通して、男と女の生きざまを描く。働く女性の生活、人生観、周囲との交友関係と上司、恋人さらに結婚生活での妻と夫、感情と思考のお互いのズレを普通の暮らしの中に描きだしている。不安と大都会に住まう寂寥感が漂ってくるそんな物語だ。

火曜日, 5月 02, 2017

P・G・ウッドハウス著「ジーヴスと朝のよろこび」、ウッドハウスの長編である。このユーモアたっぷりの作品を戦時下、ドイツによる捕虜として収容所を転々とした時期に脱稿したというのが信じがたい。ウースター青年と彼を取り巻く親戚、友人、知人を交え様々な事件、困難の渦中でジーヴスの才気溢れる状況判断により窮地を脱する長編物語だ。ジーヴスの登場は控えめだがウースターの窮地を前に登場する彼と青年ウースターのコンビは読者をほのぼのと幸せにしてくれる。
P・G・ウッドハウス著「ジーヴスの事件簿 大胆不敵の巻」、ウッドハウスのジーヴスもの、短編集である。お馴染みのウースターとジーヴスとのやり取りは正に絶品だ。主人と執事という関係において求められる最高の人間関係と言えよう。何故か英国的なユーモアなるものが、根底にあり何とも言えぬ面白さとともに清涼感を与えてくれる。
松永大司著「トイレのピエタ」余命3か月と医師から宣告された園田宏は癌だった。人間の死、死を迎える人間、彼はまだ28歳だった。名前も知らない女子高校生との最後の出会いと交流。死ぬ直前、故郷へ帰郷する両親との団欒にも耐えられない、東京の自分のぼろアパートで最後まで過ごした宏。人間死を意識したその時、心の内は全て浄化され純粋になってゆく全てを受け入れそして死に向かう
アンドレアス・グルーバー著「月の世は暗く」オーストリアはウィーンを舞台に展開する刑事物語だ。次々と女性が誘拐され拷問され殺害される。起動捜査課の刑事ザビーネの母が拷問殺害された。ドイツから来た偏屈で奇人の事件分析官マールテン・スナイデルという人物と捜査を担当することになる。犯人カール・ボーニは幼児虐待を受け精神疾患を患う青年だ。麻薬や強姦で捕まるが裁判所からの通達でセラピーを受けることになる。幼児期に読んだと思われる絵本を題材にそこに書かれた殺人を次々に実行する。セラピストを襲い誘拐し彼女らの指をハサミで次々と切り落としてゆく。二人の執拗な捜査が続き犯人を遂に追い詰めた。
山本文雄著「なぎさ」神奈川県は久里浜を舞台に長野須坂から移住した夫婦とその周りの人々の人間関係を描写し人間の根源的な問いを題材にした物語だ。人間の奥底に潜む感情を表現し、分かり合うことがどんなに困難か?という素朴な疑問を呈しているこの物語は読後心に隙間風的な空虚感が去来する。それぞれの人がそれぞれ生きるこれが人生であり社会だろうか。
畠山健二著「本所おけら長屋」六おけら長屋に住む住人、松吉そして万造いつものドタバタ劇が繰り広げられる。長屋の住人のほか聖庵堂の先生そこに努めるお満を始め数々の人物を配置し物語を盛り上げる。いつもながら作者の大江戸人情話は爽快かつ痛快だ。底には日本人ならではの心意気が込められ今の世の中に足りないものを感じぜずにはいられない。
P・G・ウッドハウス著「ジーヴスの事件簿 才智縦横の巻」久しぶりに著者のジーヴスとウースターものを読んでみた。機転が利き頭脳明晰にして執事たるジーヴスとバーティーの織りなす日常生活の中での事件は読んで楽しいしまた何とも言えぬ面白さがある。主な登場人物は2人の他にはウースターの友人と伯母これらの人々が巻き起こす事件をジーヴスが様々な手段で解決してゆく心地良さとも言うべき物語だ。
青山文平著「つまをめとらば」江戸の時代物短編集である。男と女の物語や友との友情を綴ったものなどが混ざっている。情やなさけそして人情と友情さらに無常とが折り重なった人間の生をそこはかとなく記す。何故かほっとる物語であった。
真山仁著「そして、星の輝く夜がくる」阪神淡路大震災を経験した神戸の小学校教師が、東日本大震災後の東北は東間市の小学校に派遣赴任する。そこで見た現実、地元住民、小学校の生徒達そして大災害が引き起こす虚脱感、家族や友人知人を失い、当てのない袋小路に迷い込んだような生活。こんなにも困難な状況下で子供たちが見せる、何にも負けな強さを赴任教師は教えられる。くしくも、今日3月11日は東日本大震災から丁度6年目にあたる。
道尾秀介著「透明カメレオン」都内某所、うらぶれたバーに集う5人ある日一人の女性がバーに顔を出す三梶恵という。女性の一言コースター(殺した)という言葉が破門を広げ、ラジオのマーソナリティを務める桐畑恭太郎の身にあるいはバーの常連を巻き込んで起こる様々な出来事が、プチミステリー的様相を添えて発生する。青春ミステリー小説だ。人間の持つ何故か根源的な心象をを教えてくれる面白さだ。

ポール・ドハティ著「教会の悪魔」中世13世紀末のイギリスはロンドンを舞台に王座裁判所書記のヒュー・コーベットなる廷吏が、サタン悪魔を崇拝する五芒星形党を組む悪党を追い詰め断罪する物語だ。ある日の殺人事件に端を発し捜査を命じられたコーベットは市内の教会に出向く。そこで自殺したとされる男の死体及び現場を具に見て疑問を呈し捜査を続行する。悲しいかな好意を寄せた居酒屋の女主人アリス、黒魔術の頭目だった。

畠山健二著「本所おけら長屋」五、例によって、おけら長屋に住む住人松造と万吉の二人が引き起こす人情沙汰、長屋の住人の人情で切り抜ける江戸庶民の浮世話とでも言うか読んでいて何故かホッとする。江戸庶民の暮らしぶりと風俗が手に取るように解る。おけら長屋物語の登場人物は絶妙の配置で作者のプロットの確かさと次々と事件を繰り出す才能は見事だ。

ジェフリー・アーチャー著「百万ドルをとり返せ」アメリカはボストンの富豪の北海油田採掘会社に投資し全財産を騙し取られた4人、オックスフォード大学の数学教授、ロンドンの町医者、イギリスの伯爵の御曹司、フランス人の画商と多彩な顔触れを配置し詐欺にあった百万ドルを奪取すべく詳細かつ緻密なプランの下に作戦を実行するといった物語だ。金を奪い返す作戦と背景がまた面白い。百戦錬磨の富豪相手にとことん騙すテクニックもまた爽快だ。
伊坂幸太郎著「陽気なギャングが地球を回す」, 何故か憎めない4人組が、銀行強盗を働く。少し世間とズレてはいるがこれ庶民の願望というかロマンを含んだ物語で軽快な文体とともに面白く読んだ。強盗の手口も鮮やかでスマートだ。現実味はないものの応援したくなる。4人の人間関係も嘘と希望と落胆と生活苦まで入り混じりそれをまたスマートに解決ししかも再び銀行の前に立つ。
トレビニアン著「夢果つる街」, カナダはモントリオールのダウンタウンで起きる殺人事件、所轄の警部補クロード・ラポワントはこの街区を何よりも愛している刑事だ。他民族国家の中でも東地区は様々な移民と言語が入り交じっている。強盗、強姦、買収、売春、麻薬、恐喝といった様々な犯罪が日常茶飯事だ。ある日三人の男性が殺害された。事件を追うラポワント警部補は必死になって犯人を追うが杳として犯人の軌跡が掴めない。様々な聞き込み調査の中で、語学学校との関連が浮上する。そこの女性経営者は警部補がかって知ったる売春婦の娘であった。事件は意外な展開へと発展してゆくが、冗長とも言える描写だが適度に期待を持たせてくれる作品だ。

日曜日, 4月 02, 2017

ジョン・ディクスン・カー著「三つの棺」カーの1930年代の作品で代表作だという本書は密室殺人の古典的価値を持つと言われている。読後に感ずる印象は、現代と違い少し時代差がつまり古いトリックだ。トリック自体もややこしいし現代の読者が諸手を挙げて賛成しかねる。主人公グリモーの過去、弟の因果を動機と位置づけて事件が起き自らも死を招く究極のトリックをフェル博士が看破する。


ドン・ウィンズロー著「失踪」アメリカ中西部の小さな町で幼い女の子ヘイリーが、失踪した。リンカーン署の刑事フランク・デッカーが捜査に中る。捜査陣の必死の追跡にも関わらず少女の行方は杳として知れなかった。少女の母親は離婚して独り身であり、デッカー刑事は必ず探して連れ戻すと約束する。このあたりが作者ドンらしいと思う。失踪から1年がたとうとする遂にデッカーは刑事の職を辞め捜査に専念する。青いコンチネンタルとともに追跡の旅が始まる。大都会ニューヨークにも足を向けた。

岡島二人著「クラインの壺」ミステリーとしては珍しい二人の作家の共著だという本書は違和感を感じさせないテンポの良さと平易な文体とモ相まって最後までページを繰らせる力がある。大学生の主人公はゲームの元ネタに応募したが落選しかしひょんなことからクラインというゲーム機器を開発するイプシロン・プロジェクトという会社に拾われ開発の動作確認に参加する。主人公上杉と梨沙という女性が参加している、ある日突然梨沙が会社に来なくなった。ここから謎を追及する探偵が始まる。

アガサ・クリスティー著「メソポタミアの殺人」イラクはバグダッド近郊、ヤリミヤ遺跡発掘現場で起こる連続殺人事件に登場する人物は考古学者のライドリー博士を始め、謎のラビイニ神父、直接物語の語り手つまり記述者としての看護婦と丁度良い加減とも言うべき人物配置と現代のミステリーにも十分通用する謎解きの核心は色あせていない。クリスティー作品の魅力が現代の通じる訳がある。
ヘイク・タルボット著「魔の淵」カナダは雪深い別荘での密室殺人事件、そこに集う1組の夫婦が殺害された。謎を事件の真相を解明すべく奮闘するが依然として謎は深まるばかりだ。遂に謎は解明された。しかも魔術師の如く巧妙なトリックを使って引き起こされた。あまりにも翻訳がぎこちなく読みずらい。世評とは一致しないミステリー小説だった。

雫井脩介著「火の粉」梶間家の周囲そして家族それぞれの人間の心理描写の上手さを実感する小説である。裁判長として勤務していた家長勲が退職し高台に5LDKの家を購入し家族6人で暮らすようになった。勲の祖母の介護は妻尋江が面倒みている。その大変さと祖母の娘満喜子との確執、さらに司法浪人としての雪江の夫俊郎と家族構成もバラエティに富んでいる。そこに隣人として武内なる勲が裁判で判決を下した男が移り住んでくる。ここから梶間家に次々と異変が起こる。絆で結ばれた家族も一度事件が持ち上がると簡単に崩壊していく危うさを感じさせる。ミステリー小説としてのプロットはやや平坦ではあるが、関係する人間の心理描写という意味で圧巻であり。別な意味での恐怖を感じさせる好著である。


畠山健二著「本所おけら長屋」四、万造、松吉そして八五郎と浪人島田鉄斎とおけら長屋に住む住人による騒動は多彩で面白い。おけら長屋コミュニティーの結束力はまさに天下一品だ。人助け、お節介で人情を基本とした様々な騒動の解決方法の根本がここにある。現代社会では既に失った江戸の庶民の心意気がここにある。気軽に読めて読後の清涼感はまた格別だ。

麻耶雄嵩著「神様ゲーム」小学生が探偵団を組織し鬼婆屋敷と呼ばれる廃屋を基地として活動する。神降市に連続して発生する猫殺しも背景を盛り上げる。そんな折に芳雄の友人が基地の井戸の中で死体となって発見される。転校生鈴木君は神様と呼ばれ彼が犯人を特定して天誅を下す。なんと芳雄が気お引くミチルという女の子だと。さらに共犯が事もあろうに芳雄を父だと。さらに天誅が下る。この小説こそミステリーだと思わせる何か不条理性を感じさせる。文体は読みづらいが、何故か惹かれる小説だ。

門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング7、遂に、東南アジアの小島アラス島での国際テロ集団VNとの戦闘が開始された。黒木隊長を始め高浜砂霧と120名ほどの隊員が急襲すつ手筈を整え血行した。そのジャングルでの凄まじい攻防の中、黒木豹介は絶命した。この痛快活劇シリーズは幕を閉じた。
畠山健二著「本所おけら長屋」三、江戸は本所おけら長屋で巻き上がる様々な厄介事を長屋の様々な住人が解決してゆく人情話は、日本人の心に住む何か温かいものを呼び起こしてくれる。事柄事に章を纏めたこのシリーズは、ふと疲れを感じたときに読むと何とも清々しい気持ちにさせてくれる。
門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング6]いよいよ国際テロ組織が迫りくる。黒木とSACの砦、悪四郎山中にも様々な陰と陽を交錯させた激烈な攻撃の最中インド洋に浮かぶ無人島への奇襲作成を実行する。黒木達連帯である。日本の総理、倉脇は元より米国大統領、先進各国首脳を交えての国際テロ組織との戦闘が開始されようとしている。

水曜日, 3月 01, 2017

ディーン・R・クーンツ著「殺人プログラミング」アメリカの田舎人口400人たらずの小さな町、そこは製材業が主な産業で湖を利用しながら木材を加工している「ブラック・リバー」と呼ばれている。オグデンと名乗る研究者が、閾下知覚研究をほぼ完成させた。彼は人間の精神をコントロールする閾下知覚を利用する方法を発見し実施試験地としてブラックリバーを選択した。傭兵による水源地の湖に薬剤を散布し住民をコントロールするべくレイプや強奪、殺害を繰り返した。しかしその閾下プログラムが何故か効果のない4人が存在した。それが主人公ポールであり雑貨屋を営むサムであった。オグデンに殺害され恐怖の中完全と悪に立ち向かうミステリー小説だ。
ローレンス・サンダーズ著「無垢の殺人」離婚してニューヨークのホテル保安課に勤務するアラサーのゾーイ・コウラー、彼女は恐ろしく地味で勤務態度は真面目だ。彼女は激しい生理痛と奇病に苛まれ、生理の周期に合わせるかのように通り魔殺人を次々と犯してゆく。ホテルのカクテルラウンジかバーで男を見繕い部屋に誘い誘われ鋭利な手持ちナイフで喉を掻き切り男性の性器を滅多刺しにしてしまう。これらの殺人の動機は一体何なのか?厳格な家庭で育てられた彼女ゾーイ、巨大な都会で孤独に暮らす日々、愛亡き日常、怠惰、倦怠、絶望とそれら全てが絡まり合う。血を見ることで精神が安定する。そんなアラサーの不遇で恐怖を伴うミステリーだった。
ブライアン・ガーフィールド著「反撃」弁護士のマールは法廷でマフィアの親分・ボスと闘い刑務所へ送り込んだ。時がたち8年を経過しマフィアのボス・バスターが出所した。法廷の証言者4人の家族に脅し恐喝恐怖が四散した。身柄確保証人プログラムによりFBIの担当官と名前を変え住処を転々として逃走していた。そして彼マール及び妻ジャンは気づいた。そう反撃だ。ボスの妻アンナを事もあろうに誘拐した。反撃は殺人計画でなく知性と人間の友情とでマフィアに反撃を開始、そして遂にマフィアのボスは折れた。勝ったのだ。
リチャード・ジェサップ著「摩天楼の身代金」ニューヨークを舞台に繰り広げられる摩天楼のホテル爆破とホテル所有者らとニューヨーク市警と犯人との凄絶な探り合い。この物語では犯人トニオ・ヴェガ青年として最初から分かっている。ベトナム帰還兵でコロンビア大学に籍をおくアルバイトの青年だ。読み終わり、何故かこの青年の事件を起こした動機が不明である。それがまさに現実的な恐怖に繋がっている面がある。実在するニューヨークの場所場所、市警の捜査、市長の登場と現実味を帯びた展開に次々とページを繰らせる迫力があり身代金の奪取方法も奇抜で面白い。
門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング5」日本の首相及び官邸直結のスナイパー黒木豹介と高浜砂霧が活躍シリーズだ。迫りくる悪・国際テロリスト集団との戦闘は頭脳と強靭な肉体を駆使し挑む黒木と特殊捜査隊一丸となって対応する。様々なテロリストの暗躍する状況設定がまさに国際的規模で行われそこに登場する人物・状況設定が著者の豊富な知識と相まって読み応えのある物語に仕上がっている。

ウィリアム・ベイヤー著「顔のないポートレート」主人公ジェフリー・バーネットは写真家である、ある時キンバリーという女性と出会う。ロマンスを育みながら物語は展開してゆく。彼女キムは女優志願でエスコートクラブで働いていた。親友が殺害され一気にミステリーゾーンへと突入する、後半は彼女、彼女の友人や関係者を交えながら物語は進む。ジェフリーも友人フランクを仲間に引き込みダーリングという富豪から現金略奪を計画し実行する。魔性と妖しい魅力を持つキンバリーという女性の天真爛漫さから想像もできないまさに魔性だ。主人公ジェフリーは翻弄されながらも最後は勝利し自分の人生を切り開く。
門田泰明著「黒豹ラッシュダンシング4」作者の防衛機器、ピストルや戦闘機を様々な殺戮機器に対する知識には感服だ。シリーズ4作目は米国大統領を交え国際テロ組織と闘う黒木豹介と高浜砂霧の活躍を描く。熊野の山中にある戦闘防衛システムに7カ国首脳が顔を合わせ秘密会議を討議中に切迫した事態が発生し凄まじい銃弾の嵐が飛び交う。