日曜日, 10月 28, 2012


お馴染みのリンカーン・ライムシリーズの最新作だ。ライムからアメリア・サックス、プラスキー、セリット、キャサリン・ダンス、パーカー・キンケイド等々オールキャストの出演だ。ニューヨークで起きた、電力会社の施設の電気、電力を使ったアークフラッシュと呼ばれる感電による殺人事件に端を発して次々と起こる連続感電による殺人事件を捜査する科学捜査官ライムのチームが犯人を追う。期待通りの出来栄えだと思う。2系統の殺人事件が最後に一つになり、取り逃がしたウォッチメーカーに辿り着くという予想外の展開は、ディーヴァーならではのものだ。最後には四肢麻痺患者のライムが、手術を受けるという決心をするに至る。今後の作品に期待したい。

毛沢東率いる文化大革命から小平の改革開放運動に経て現在の中国があるが、共産主義体制化での資本主義的経済の導入はそもそも砂上の楼閣だ。私的所有を認めず全て国家に帰属する社会主義体制下での経済統制は、政府と共産党で行う。資産の総額で貨幣の流通量を決定するという資本主義経済と違った統制は、経済が順調に拡大していく間は良いが、一端下降に向かい8億人とも言われる下層人民が飢えるような事態に陥った場合は、暴動が起こり政府、共産党政権は転覆の憂き目に会うだろうと。そのチャイナリスクをどうリスクヘッジするか、日本国家及び日本人の我々が問われている。


月曜日, 10月 22, 2012


幕府や朝廷の御用達として京都御三家の一家後藤家は、金細工を一手に引き受ける名門で働く庄三郎の生涯の物語である。時は信長亡き後秀吉の時代の京都を中心に金座を預かり黄金の小判を鋳造する後藤家庄三郎は俄かに戦乱の空気が漂う中家康に重用され側近として家康とともに黄金を採掘し江戸に金座を開設し小判を作る差し詰め現代でいう日本銀行で庄三郎は総裁といったところだ。大御所家康の忠勤するその生きざまはサラリーマンの見本といったところだ。


17世紀前半1628年光圀は誕生する。徳川頼房の三男として誕生し直ぐ上の兄は夭逝する。幼名を子龍として幼少年期を送るが、兄がいるにも拘わらず世子として水戸藩を継ぐことに生涯に渡り心の中の一点の曇りを抱いて生きてゆくことになる。義を重んじ義に生きる生涯は、幼少期の兄を差し置いて世子として家督を継ぐこの一点にあった。文武に長け、学者肌の光圀は史書の編纂に生涯を賭けることになる。詩や歌さらに明からの亡命者を師として様々な知識を取込み晩年は水戸の黄門様として徳川綱吉を補佐してゆく。今に残る水戸藩江戸藩邸は、小石川後楽園として存在する。

水曜日, 10月 10, 2012


16世紀半ば、舞台は上州は上野国(現群馬県)地元を舞台にした時代小説で近隣の地名があちこち出てきて楽しく、こんなにも城があったのかと驚かされた。上州西部にあった箕輪城主長野信濃守業政(なりまさ)の物語である。甲斐の武田晴信(後の信玄)に度々来襲を受けその度に知恵を尽くして箕輪城を守り抜いた武将業政の上州人としての気骨・気質は読者に清涼感を齎してくれる。



戦国時代を駆け抜けた武将である藤堂高虎の物語である。戦(いくさ)の度に槍を持ちパートタイマー戦士として働いていた高虎だったが、主君に恵まれず数度替え遂に秀吉の弟秀長に仕えることになった。秀長は算術に長け秀吉の戦の裏方として兵糧から銭までを一手に取り仕切っていた。そんな主の元で槍だけでは駄目だと悟り徐々に城造り・土木技術を身につけスペシャリストとして成長してゆく。秀吉に重用されまた晩年はゼネラリストとして家康に絶対的信頼を築く生き様は現代のサラリーマンや中小企業経営者のバイブル的な面白さがあり上下巻合わせて1500頁にも及ぶ長編時代小説ながら一気に読み通せる魅力がある。高虎が語る言葉がまた生き様は現代に生ける我々の身に迫るものがある。