木曜日, 12月 31, 2009

2009年 年間一人の読者大賞

今年も乱読に終始したが、やはりミステリーが中心であった。そして年末に至りスウェーデンの今は亡き作家スティーグ・ラーソンに出会った。「ミレニアム」シリーズ3部作およそ3000ページに及ぶ大作である。スケールの大きさ、ミステリーとしての面白さとすべてに渡り★★★★★である。私個人の一人の2009年読者大賞は、「ミレニアム」シリーズ3部作に決定いたします。

スティーグ・ラーソン著「ミレニアム3」を読んで。

あっという間に、「ミレニアム3」を読破した。素晴らしく面白い。J・ディーヴァー「ソウルコレクター」を凌駕している。ミレニアム2の後半を引き継ぐ形でミレニアム3が展開を始める。リスベットは、病院に収容されリハビリを続ける。一方ミカエル・ブルムクヴィストが呼ぶところのザラチェンコ・クラブを組織するスウェーデン警視庁公安部の影の「班」と呼ばれる者たちが、ザラチェンコなるスパイを非合法的に数年にわたり保護してきた事実をもみ消そうと、躍起になってあらゆる手段を持って抵抗を始める。後半はいよいよリスベット・サランデルの裁判へと国を揺るがすいわゆる国家の闇を暴く裁判へと進む。ミカエルの妹アニカ弁護士と法廷での戦いそして「班」との抗争が平行して物語は緊迫した中で進み読者を離さない。そして、サランデルは無実を勝ち取った。著者の女性に対する性的暴力を含めあらゆる暴力に対する徹底した抵抗テーマにかくもこれほどのサスペンスとミステリーに発展させる力に感服、そして今年最後にこの本に出合えたことを幸福と思う。

スティーグ・ラーソン著「ミレニアム2」を読んで。

スティーグ・ラーソン著「ミレニアム2」を読んで。
たて続けに、ラーソン著「ミレニアム」シリーズを読んだ。2作目は、リスベット・サランデルの過去が暴かれる。サブタイトルは、「火と戯れる女」だ。彼女の強烈な個性は、一度前編第一作を読んだ読者は、忘れられない印象と供に書店に走らざるを得ない状況に置かれる。それほど面白い。ミレニアムⅠが、ドロドロした血縁の中に起こる正に横溝正史的サスペンス&ミステリーに対し、Ⅱでは俟たしてもリスベットの周辺で起こる殺人事件が起こる。再び、ミカエル・ブルムクビストとの再会となる。彼女の強烈な個性を中心として、様々な登場人物そして読者をグイグイと引き込んでゆくミステリー&サスペンスは、多様な伏線を用意し、最終ページまで一挙にページを捲ることを強要させられる。ラーソンは、本著で全世界の女性に対しての「女性解放宣言」ではなかろうかと思われる。このミレニアムは、決して悪そして不遇に屈しない堂々とした女性を計り知れない愛情を持って描いていると思う。

日曜日, 12月 20, 2009

スティーグ・ラーソン著「ミレニアムⅠ」を読んで。

著者は、北欧はスウェーデンの記者を経て作家活動に入ったという。3部作の長編推理小説のうちの第一巻が表題のミレニアムⅠである。残念なことに、この3部作執筆終了時点で事故で他界したという。ストックホルムから北にあるヘーデスタ及びヘーデビー島中心に物語りは始まる。雑誌ミレニアムの共同経営者であるミカエル・ヴィルムクビストはとある国際的シンジケートを操るヴェンネルストレムなる人物に関する記事により名誉毀損で有罪判決を受ける。現状の仕事に対する意欲を失墜し休暇の為自分の別荘へと、そこへヘンリク・ヴァンゲルなる人物より自分史の執筆の依頼が来る。この大物老実業家ヴァンゲルとヘーデスタでの依頼人との契約の中孫のハリエットの失踪を知る。著述は表向きで実際はその失踪事件の解明を希望される。やむなく契約しミカエルの1人での失踪事件の捜査が開始される。物語は、ドラゴンタトゥをしたリスベット・サランデルなる女性の描写と平行して進む。そして二人はやがて一緒に失踪事件に取り組むことになる。彼女は得意な記憶能力とパソコンを自由に操るいわゆるハッカーとしてスウェーデンでも屈指の達人として知られている。30年前のこの事件の捜査を巡り二人の取り組みが始まる。ミカエルの身に様々な災厄が降りかかり30年前の事件が今でも生きていることを証明される。ヴァンゲル家の様々な人々の描写、ミレニアム共同経営者エリカ・ベルジュとの関係と描写、サランデルの過去と事件の伏線の描写は読者を飽きさせることなく進んでゆく。そして事件はヴァンゲル家の内部で発生した事を知ったミカエルは、敵の住む家へと。北欧の地を舞台にカリブまでスケールの大きさを感じさせるJ・ディーヴァーを凌駕するほどのミステリーだと思う。

日曜日, 12月 06, 2009

ジェフリー・ディーヴァー著「ソウルコレクター」を読んで。

550ページにもなる長編である。リンカーン・ライムとアメリア・サックスのコンビが、犯人を追跡するシリーズだ。物語は、ある巨大なデータマイニングセンターを中心に展開する。犯人の正体は「全てを知る男」だ。住所、氏名、家系、数ヶ月間のクレジット情報から趣味、行動パターンさらにGPSによる追跡調査まで、そして様々な物を収集するコレクターだ。リンカーンを中心とする犯罪捜査斑の身内にも犯人の魔の手が伸びる。いとこのアーサーが殺人犯として起訴されることから、不審に思ったリンカーンの捜査が開始される。殺人犯のルーキーといわれるプラスキー巡査、ニューヨーク市警ロン・セリットー警部そしてアメリアと殺人犯は執拗に攻撃を開始する。例のディーヴァー特有のどんでん返しを期待して読み進める。が幕切れはデータマイニングセンターの警備員の犯行と判明する。期待して読んだが、過去のディーヴァーの作品からするとまあまあかなと思わせる出来だ。