日曜日, 5月 31, 2009

柴山政行著「原価計算の基本と仕組みがよ~くわかる本」を読んで。

著者は、公認会計士でかつ経営コンサルであり、また専門学校の講師をしているという。製造工場に於ける原価とは?一体どうやって把握するのかという問いを基に読んでみたが、原価の仕組みから始め、財務諸表のB/SとP/Lとの関連さらに利益管理の為の原価計算そして戦術的意思決定のための、また長期的戦略的意思決定のための原価計算と幅広くやさしく解説してある「原価計算」「原価管理」の入門書といったところだ。
前述のBSとPLの関係を原価を基に説明している箇所は、思わず「成る程」と思う。

土曜日, 5月 30, 2009

綾辻行人著「黒猫館の殺人」を読んで。

ネットで、面白いお勧めミステリーとして検索した結果、タイトルの著者綾辻氏の館シリーズが眼に留まった。早速シリーズ本を購入し、年代順を問わず取り合えず第1作目に選択したのが「黒猫館の殺人」であった。鹿谷なる小説家が殺人事件を解いて行く物語の主人公である。読み終えて、私好みのJ・ディーヴァーやダン・ブラウンと違いやはり日本のミステリーには、あの読まずには眠れないようなドキドキ感やワクワク感がない。スケールが違う。現在「天使と悪魔」が上映されていると聞く。是非見に行きたいと思う。本題に戻ると特異な館・建物を建築以来した大学教授天羽博士の黒猫館と呼ばれる館での殺人事件の手記によって展開して行く。てっきり北海道の釧路での建物と思って読んでいたのだが、実は南半球のタスマニアに対となった建物がもう一つ存在したという絡繰りには、正直突拍子も無い発想には驚いた。殺人の内容は至って古典的なものであり、これといった物は無かった。

木曜日, 5月 14, 2009

半藤一利著「昭和史 戦前編」を読んで。

日清・日露戦争を経て、昭和に投入するがこの昭和の歴史(1926年から1945年)戦前の歴史は、正に激動そのものであった。講義形式での半藤さんの歴史書はこれで3冊目になるが、500ページを超える著作にも係わらず、歴史を読む面白さを余すとこなく伝えきっていると思う。半藤さんによれば、江戸城開場から明治時代までの40年さらに第二次世界大戦・太平洋戦争終結までの40年と40年おきに歴史の大転換期を迎えるという。昭和戦前史は正に戦争の歴史そして310万もの日本人の生命を賭して戦った無意味な戦争の歴史であった。日本人の官僚・軍官僚の世界観・地政学的ストラテジーの欠如、希望的観測のみで観念的世界を一人作り上げ満足してしまう精神構造をこの40年の歴史に学ぶことこそ重要であるという。それにしても、「幕末史」の中での勝海舟と同様、太平洋戦争時の山本五十六と状況を的確に把握せる人物がいたもんだと思う。

土曜日, 5月 09, 2009

小熊英二・上野陽子著「<癒し>のナショナリズム」を読んで。

1997年に発足した「新しい歴史教科書をつくる会」に始まり、2001年に出版された「公民教科書」及び「歴史教科書」に対する批判そして「つくる会」をフィールド調査を実施した上野のノートに拠り、現代日本のナショナリズムを分析しようとする試みである。「つくる会」のメンバーは、会社員、公務員、自営業、主婦など年代別には、戦後、戦中、若者と平均年齢39歳という比較的若い会の構成員だ。彼らからの会への出席そしてアンケート調査により、彼らが言うところの「普通の市民」の普通を解明し、日本民族というかナショナリズムに潜む普遍性を解明しようとする稀有な方法だ。

火曜日, 5月 05, 2009

半藤一利著「幕末史」を読んで。

前に読んだ「昭和史」同様、講義調で実に判り易く解説された物語風歴史書である。江戸城無血開城となった1863年を機に明治維新として日本の歴史が新たな展開を見るが、この明治維新は日本独特のものでビジョンも未来の国家建設のための思想も哲学もなく、流れて或いは流されていく今日に見る政治的、社会的状況と同一なものと認識されつくづく日本的だと思う。幕末に於いての雄として勝海舟と西郷隆盛両人が歴史に深く関わり度々重要な場面で登場してくるが、この二人が幕末史の両極思想を代表する。戊辰戦争そして西南戦争から、日本の軍事独立と軍国主義国家の基礎ができつつあるとみる著者の歴史への理解に同感するものである。