土曜日, 3月 07, 2009

小熊英二著「インド日記」を読んで。

著者が、2000年1月から2月に渡りインドデリー大学の客員教授として招待された際に記した日記を纏めた一冊である。著者の本はこれまで1冊読んだが、内容はわかりやすく日本の近代史、明治維新から昭和までの歴史、民族的ナショナリズム、民衆のアイデンティティを研究する人である。今や「フラットの世界」でも度々登場する南西部のバンガロールは、既に知られているとおり、世界のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーイング)のメッカである。著者が2ヶ月に渡り現地インドの東西南北を旅しての感想というか旅行記は、当時のインドのドキュメンタリー及びルポとして評価したい。知識人及び著名人との対話を通して当時のインドの状況が解る。カースト制という階層の社会で逞しく、したたかに生きるインド民衆の生活が肌で感じられるように描写されている。知識人との対話の中で「日本山妙法寺」の立役者中村上人の思想は現代社会に生ける我々日本人の生き方をもう一度見直すべき蘊蓄を感じる。