土曜日, 11月 03, 2007

ロバート・ゴダード「リオノーラの肖像」を読んで。

引き続きゴダードを読む「リオノーラの肖像」は、サスペンスを軸に展開するが恋愛小説とも言える私にとって五つ星と思える出色の小説である。ストーリーの面白さそして心理描写といい、さらにサスペンスを挟む面白さ文章の重厚さの中に小説家でしか表現できないまさに私好みの表現がそこかしこに。主人公リオノーラの幼児期から現在に至る過去を紐解きつつ、つまり回想形式でリオノーラの父親の友人であるトム・フランクリンが語る一部始終は、第一次世界大戦の英国と独逸軍との戦争を境に展開してゆく。著者ゴダールは第一次世界大戦を中心に戦争の悲惨さの中に生きた人々の愛、死、別離と人間の様々な生き様を表現し、戦争が齎す悲惨を描写してゆく。複雑に絡み合う人間模様を実にうまく展開し、サスペンスとして見事に表現する筆者は小説家の中の小説家として絶賛したい。(評価:★★★★★)