月曜日, 12月 31, 2007

ロバート・ゴダード「蒼穹のかなたへ」を読んで。

場所はギリシャのロードス島、主人公ハリー・バーネットの島での友人である女性ヘザー・マレンダーが突然姿を消す。真相を追うハリーの追跡が始まる。ギリシャとイギリスを舞台に物語は、前半はやや冗長感は否めないが、後半は読み応えがあり、意外な結末へと展開する。前作「リオノーラの肖像」のように文章に重圧感は無いものの、ミステリーの設計はかなりなものである。ヘザーが残した写真をたよりに、彼女の軌跡を辿りながら核心へとハリーが突き進む。恩義がある親友アラン・ダイサートへと、上巻を読みながらアランの存在が気にかかるが、しかしこの結末は予想だにできない。大学時代の友人二人、ヘザーの姉クレア・マレンダーと殺人を繰り返すアランの正体は、ハリーが少年時代線路上に置き去りにされた箱の中に入っていた捨て子であったと言う。人生とは運命とはと考えさせられる、運命、偶然が人の生きる道を様々にくねらせる。。。

火曜日, 12月 25, 2007

村上春樹著「海辺のカフカ」を読んで。

僕こと主人公である田村カフカ自称15歳の青春の旅路に邂逅する人々との交流が一つの線で、もう一つは主人公田村少年の叔父にあたるナカタさんと徳島生まれのトラック運転手の星野青年との邂逅と旅路がもう一つの線である。この二つの線が、最後高松の甲村図書館に勤務する女性に接続する。物語はこの二つの線が同時に進行してゆく、主人公と四国行きの高速バスで出会うさくらという女性、そして甲村図書館での大島青年実は女性であるが、さらに一緒に勤務する謎の過去を持つ女性佐伯、青春の出会いというべき運命的な邂逅と徳島生まれの青年と旅するナカタさんが、邂逅する人々ジョニー・ウォーカー、カーネル・サンダース、そして最後に佐泊という女性、ナカタさんは静かに息を引き取る。書名である「海辺のカフカ」は佐泊という女性が作った曲名である。著者は、真摯な心を持ち人生を探求するものには必ずやそれが死であろうと安らかな結果があるという。

水曜日, 12月 05, 2007

ロバート・ゴダード著「日輪の果て」を読んで。

R・ゴダードにも乱歩の明智小五郎なみの探偵がいたのである。ハリー・バーネットである。スタンドのパートタイマーとして働く風采のあがらぬダメ男が自分の子供である天才数学者の破滅そして死に際し、彼独特の手法で真相の核心へと突き進む。理論物理学や数学的な科学的事項が随所に出没する。J・ディーヴァーの結末みたいなジェットコースター的展開は無いものの最後の犯人は意外な人物である。

江戸川乱歩全集第22巻「ぺてん師と空気男」を読んで。

昭和34年乱歩の終末期の長編探偵推理小説「ペテン師と空気男」は、かってこれまでの乱歩の作品とは一線を画すものであるという。プラクティカル・ジョーカーと呼ばれる遊びの中で殺人へとのめり込んでゆく主人公野間五郎とジョーカーである伊藤錬太郎と美人妻の美耶子とその仲間の異常な遊びを主題に物語は展開し意外な結末へと。この作品は確かに乱歩の中では異色である。

土曜日, 11月 03, 2007

ロバート・ゴダード「リオノーラの肖像」を読んで。

引き続きゴダードを読む「リオノーラの肖像」は、サスペンスを軸に展開するが恋愛小説とも言える私にとって五つ星と思える出色の小説である。ストーリーの面白さそして心理描写といい、さらにサスペンスを挟む面白さ文章の重厚さの中に小説家でしか表現できないまさに私好みの表現がそこかしこに。主人公リオノーラの幼児期から現在に至る過去を紐解きつつ、つまり回想形式でリオノーラの父親の友人であるトム・フランクリンが語る一部始終は、第一次世界大戦の英国と独逸軍との戦争を境に展開してゆく。著者ゴダールは第一次世界大戦を中心に戦争の悲惨さの中に生きた人々の愛、死、別離と人間の様々な生き様を表現し、戦争が齎す悲惨を描写してゆく。複雑に絡み合う人間模様を実にうまく展開し、サスペンスとして見事に表現する筆者は小説家の中の小説家として絶賛したい。(評価:★★★★★)

月曜日, 10月 29, 2007

ロバート・ゴダード「惜別の賦」を読んで。

ゴダードを始めて読む。最初はミステリーかなと疑問に思いつつ、読み進みにつれ用意周到に練り上げられた人物の伏線が次々と主人公クリス・ネイピアに接近し事件の渦中へと。今日、昨日、明日の3部構成の本書は、昨日の約30年余前に起きた大祖父の殺人事件に絡む一連の追憶に最もページ数を割く。人間の本来持っている姿そのままで生き抜く人生の知恵というか。金を欲張らず、人生を急がず、気の向くままに自分の気に入った趣味を思うがまま行うという、人間の生き方に共感する。

水曜日, 10月 24, 2007

マイクル・クライトン「エアフレーム 機体」を読んで。

航空機事故に纏わるSFというよりは、推理小説である。物語は、香港から米国デンバーへ向けて飛行中のトランスパシフィック航空545便にて、機体が急上昇と急降下を繰り返す所謂「イルカ飛び」現象が発生し、死亡3名、負傷者56名という事故が発生する。航空機メーカであるノートン・エアクラフト社の品質保証部の事故原因究明チームのケイシー・シングルトンが主人公である。事故の渦中での中国とのN22型事故を起こした同型機の商談、事故を回る著名なTV番組クルーとの戦い、さらに社内の副社長マーダーと現社長との派閥抗争と航空機事故を中心に様々な状況の中に主人公を置く設定と航空機なかんずく機体に関する詳細なる科学的情報はクライトンならではである。

火曜日, 10月 16, 2007

ダン・ブラウン「パズル・パレス」を読んで。

読後の感想は、「実に面白い」。スピード感とスリルと、細かく章を分かつ同時進行的筆致は圧巻である。書いたのが1998年だという。当時から米国国家機密情報機関としの国家安全保障局通常「NSA」はネットを介したEメールの全てに検閲を加えていたとは脅威だ。ウィルス、ワームという言葉が既に本書で使用されている。物語は、元NSA職員エンセイ・タンカドがスペインで殺害されるところから始まる。トランスレーターという巨大スーパーコンピュータによる暗号解読さらに政府機関からペンタゴンまで使用するデータベースの破壊という脅威に立ち向かうNSA職員スーザンそしてタンカドが仕込んだ暗号を求めてスペインに送り込まれるスーザンの恋人、Dベッカー、しかしこの著者の背景にはいつも驚かされる用意周到な事実がある。この背景の中で登場人物が様々な場面で交錯しながら展開するその迫力には、拍手を送りたい。(評価:★★★★★)

火曜日, 10月 09, 2007

鍋島美奈子・石川愛「SIS入門」基礎から学ぶGIS を読んで。

GIS(ジオグラフィカル、インフォメーション、システム Geographical Information System)地理情報システムというシステムの入門書である。仮想の(オーバレイ)シート上に地形図やら航空写真やら住宅地図やらを重ねさらに、この図形データと属性としての文字データを重ね様々な空間的分析を行うといったシステムである。ビジネスでは、ある地域の出店計画に利用したり、森林の分布や酸素の供給といった温暖化対策の基礎データを地図図形と合わせた形で視覚的に表示するといった様々な用途に利用されている。中でも、多分であるがイギリスはロンドンの大学生が基礎を作成したといわれる「SIS」は幅広く利用されている。本書は実際の入門書である。驚異的なのは、図形データと文字属性データベース情報との連携で最短経路の検索ができるということである。

岩間健二郎「間違いだらけのゴルフクラブ選び」を読んで。

数年に渡り、このシリーズを読んでいるが、著者の意図的とも思えるあるメーカーに偏った推薦というものが感じられる。各ゴルフクラブメーカにとって、この本での最優秀賞が持つ意味はかなり大きいに違いない。ちなみにダイワについては数年前に著者のシリーズの中で貶されてから出品していないという。
しかし、クラブが大好きな私にとって出れば、必ず買ってしまう。著者の意図的と思える部分も読めるようになった。実際に著者が、例えばHS40mにて試打したときの、飛距離を何Yardと書くべきではないか。と思う。勿論スピン量そのた要因で実際の読者がクラブを購入してもその飛距離には到達しないかもしれないが、かなり参考になることは間違いない。

江戸川乱歩全集第21巻「ふしぎな人」を読んで。

21巻は、怪人二十面相いや四十面相のオンパレードというか、昭和30年初期の少年倶楽部とかの少年少女雑誌の連載物である。しかし良くもエネルギッシュにこれだけの物を書いたという感想である。明智探偵から小林少年探偵団団長、少女団員、ポケット小僧と変化をつけ読者を引き込んでゆく。今読み返してみて、昔の記憶が走馬灯のように蘇り夏の暑い午後縁側で寝そべって読んだ雑誌のインクの匂いを蘇らせてくれる。

日曜日, 10月 07, 2007

トマス・ハリス「ハンニバルライジング」を読んで。

1940年代第二次大戦のリトアニアに住む幼いハンニバルは、ナチドイツ軍の襲撃に遭遇する。妹ミーシャは、殺戮され食用とされる。この数奇な運命から彼の人生は劇的に変わり、青年期の殺人者へと変貌する。殺人の連鎖とそれは過酷な運命に弄ばれた妹ミーシャに捧ぐ、鎮魂の歌ではなかったろうか。犯人たちへの憎悪があだ討ちとなって、次々と殺人を犯してゆくハンニバルの心にもはやキリストの神は居ないと誓う。ナチに占領されたフランス、大戦後スターリンの大粛清と西欧は悲劇の真っ只中に置かれる。ハンニバルの性格は、悲惨な戦争の中で育まれた数奇な運命としか思えない。キリストの神ではなく日本的な無と沈黙と東洋的な神秘性を作者は追う。

土曜日, 10月 06, 2007

ダン・ブラウン「デセプション・ポイント」を読んで。

先月は、仕事が忙しく中々読書する時間が取れなかった。ダン・ブラウンの著作を手に取るのは、3作目だ。デェセプション・ポイントは、米国大統領を取り巻く陰謀を主人公であるレイチェル・セクストンNRO国家偵察局に勤務するセジウィック・セクストン上院議員の娘だが、海洋学者マイケル・トーランドとともに陰謀の秘密を暴いてゆく。NASAの無駄な経費を追求し、民間宇宙関連企業を宇宙開発に参入させようとするセクストン上院議員の反駁を躱わす為、NASAエクスとローム長官とNROがミルン棚氷の300m下の氷の中に隕石を発見するというNASAが開発したPODOSなるシステムを使って、この隕石から1億数千万年前の地球外生命体の化石が含まれているというNASAにとって画期的な発見というお膳立てだ。この物語の背景にある詳細な科学的記述は驚嘆に値する。NASA、海溝地質、化石、兵器とその幅広い知識と記述は物語を引き締める。この隕石がミクロネシア海溝の6000m下の海底の岩石だという事実を突き止め、この隕石だという岩石に付着した地球外生命体だという化石は、またこの海底にかつて生息した海洋生物だと判明する。この事実から自分の父親である上院議員、陰謀に加担する組織のトップからザック・ハーニー大統領の窮地を救う。ダヴィンチコード、天使と悪魔に続いて読んでみたがいずれの著作もかなり良い。ただ、やはり「天使と悪魔」が一番面白かった。

日曜日, 9月 09, 2007

ジェフリー・ディーヴァー「ヘルズ・キッチン」を読んで。

2001年の作だ。まだ、大ブレイクする前のジョン・ペラムシリーズの最後作だという。ペラムとマンハッタン西地区一帯の総称としてのヘルズ・キッチンこの地区を舞台に物語は展開する。主人公のジョン・ペラムはインディペンダント系のハリウッドの映画監督またもとスタントマンだった、口述歴史によるドキュメンタリー映画製作を目途にニューヨークへそしてエティ・ワシントンという黒人の老婦人と出会う。一体管轄するマフィアであるマクレイ、そして一帯のビルを放火する放火魔のサニと登場する。特に放火魔の内面に迫る緊迫した心理描写は迫真的である。しかし後のディーヴァーの面影つまりローラコースター的物語の展開はない、最後に歴史を語る老黒人婦人の夫が、ペラムの父親だったと判る。

土曜日, 9月 01, 2007

JK・ローリング「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を読んで。

ハリー・ポッターシリーズ第四巻だ。三校魔法対抗試合に挑戦する羽目となったハリー。次々と襲い掛かる困難に見事に打ち勝っていく物語だ。ハリーを取り巻く様々な登場人物の過去及び実態を明らかにし過去の物語の伏線を見事に蘇らせ結び付けていく作者ローリングの周到な準備を思う。対抗試合の第三の課題ヴォルデモート卿が蘇りハリーと決闘する。辛くもハリーは、ディゴリーの亡骸を引きずり、ホグワーツに戻れることになった。最終章でハグリッドの人生の教訓が心に響く。「くよくよ心配しても始まらん。来るもんは来る。来たときに受けて立ちゃええ」

火曜日, 8月 28, 2007

ダン・ブラウン「天使と悪魔」を読んで

上下巻あわせて700頁に及ぶ長編大作である。以前「ダヴィンチコード」を読んだが、壮大な物語はマイクル・クライトンはたまたジェフリー・ディーヴァーをも凌駕する圧倒的な情報量を持つ背景描写には感服した次第だ。この物語は宗教と科学という壮大なテーマをミステリー調に仕立てかつエンターテイメント性を忘れず最後までハラハラ・ドキドキ感を読者に齎す、稀に見る傑作である。主人公であるハーバード大学教授ロバート・ラングドンシリーズの2作目だ。ヴァチカン市国を舞台に展開する犯人のイルミナティーと反物質なる時限爆弾の捜索と。。。ただただ、面白い。

木曜日, 8月 23, 2007

渡辺信一郎著「江戸の閨房術」を読んで。

閨房とは、簡単に言えばベッドの中でということである。色道指南あり嫁に行く娘の指南ありと、江戸町民は性を解放的に楽しんでいたという。1600年代の初めに既にこうした数々の性に関する著作が出版されていたこと事態、西洋から200年も前であったと。正に驚異的である。女性性器の分類について上品、中品、下品、新開と分類し上品の女性を娶らば一生の宝物を見つけたのと同じ位の値打ちがあるという。世の男性諸君は、江戸の閨房術を学んでから結婚すべきだと。

日曜日, 8月 12, 2007

江戸川乱歩全集第20巻「堀越操作位置課長殿」を読んで。

昭和32年、乱歩最終短編作「堀越操作位置課長殿」を始めこの20巻には、少年・少女雑誌への投稿ものが、収録されている。大人物の焼き直しで過去の作品からの流用がほとんどだが。何故か少年の頃の懐かしさと郷愁からツイツイ最後まで読んでしまう。乱歩を読むと田舎の木造校舎の匂いと澄んだ川の流れ、夏休みにカジカや鮎・ウグイを銛で突いた様々なセピア色のシーンが脳裏を過る。

金曜日, 8月 10, 2007

レイモンド・チャンドラー「ロンググッドバイ」を読んで。

サスペンスでは、古典的な傑作と言われる「ロンググッドバイ」。主人公で私立探偵のフリップ・マーローを取り巻く人間が引き起こす殺人事件は相互に関連しながら物語りは展開してゆく。1953年の出版であるから、既に50年つまり半世紀を過ぎた作品である。著名な作家村上龍による翻訳である。翻訳者村上の覆いいれとは裏腹に、ジェフリー・ディーヴァーやマイクル・クライトンを読んだ後では、もはやサスペンスとは?と疑問が沸き起こるほどの展開もなく、人間との交わりを通しての作者の人間観を垣間見る程度にしか面白みが沸かない。

火曜日, 8月 07, 2007

JKローリング「ハリー・ポッターとアズカバン」の囚人を読んで。

友人二人、ロンとハーマイオイニーそして校長ダンブルドア、囚人シリウスブラックとの運命の出会いをとうしてハリーは成長する。なき父母の仇であるペテグリューさえも許す心を持ったハリーそして亡き父母の友人でありハリーの名付け親のシリウス・ブラックとの物語、後半部分は手に汗をといった展開は見事である。ハーマイオイニーが持つ逆転時計によるサスペンス的展開は見事である。

月曜日, 7月 30, 2007

江戸川乱歩全集 第19巻 「十字路」 を読んで。

江戸川乱歩還暦を迎えての昭和30年頃の長編推理小説「十字路」原案は渡辺剣次なる者の協力を得ているという。愛人との共同殺人と偶然にも死人が自分の運転する車にあるという今や古典的発送であるが、文章はきびきびとした文体で中々読ませる迫力がある。「魔法博士」や「黄金豹」や「天空の魔人」は当時の少年雑誌の連載ものであるが、郷愁の念が読ませる何かがありつい最後まで読んでしまう。

水曜日, 7月 11, 2007

江戸川乱歩全集第18巻「化人幻戯」を呼んで。

乱歩60歳還暦の時の連載長編ミステリだという。「化人幻戯」は、海外ミステリからトリックを引用などと批判されたようだが、数十年経過した昨今読んでもやはり面白い。小学生の頃だったか、学校の図書館から借りた乱歩の本、本のタイトルは忘れたが家に帰り夢中になって読んだ記憶が走馬灯のように浮かんできた。

月曜日, 7月 02, 2007

「在庫管理の基本と仕組みがよーくわかる本」を読んで。

湯浅和夫他2名の共著として出版された最新の在庫管理の考え方を平易に解いた本である。在庫量は、日数に換算するといった基本的な管理から、常に1日当たりの平均出荷数を把握し発注点を毎日チェックするといった観点は納得できる。突き詰めていくと、SCM(サプライチェーン・マネイジメント)となり、中間サプライヤーを省略するかたちでのロジスティクスという考えに到達するという。しかし悪まで在庫管理は在庫削減にあり、そのためにインターネットのインフラを活用して全社を挙げて取り組むべき経営をも左右する重大な問題だと気づく会社こそ生き残りができる。という結論だ。

月曜日, 6月 25, 2007

マイクル・クライトン「失われた黄金都市」を読んで

地球資源開発技術社通称ERTSは、世界各地の現在の状況をデータベース化し提供する会社である。様々な調査隊を編成し世界各地に派遣する。女性天才数学者のキャレン・ロスを隊長とする班は、ブルーダイヤモンドを探して旧コンゴ現ザイールの探査に赴く。ブルーダイヤは、コンピュータを飛躍的に演算処理速度を上げるチップに採用される可能性があるといわれている。この隊の編成は、アフリカ大陸をガイドとして何度も経験を積んだマンローと動物学者エリオットそして人間の言葉を理解し手話を使えるゴリラのエイミーが同行する。鬱蒼とした森林ジャングルの中で様々な困難に立ち向かう調査隊そして終に幻の都市ジンジを発見する。ジャングルそして調査隊が持ち込む様々なハイテク機器そして日欧合弁会社との覇権争いとゴリラの生態そのディティールを描くクライトンの筆致はこの上なく面白い。

日曜日, 6月 24, 2007

中西佐緒莉「海外でさっさと暮らせるようになろう」を読んで。

世界幅広く、リタイアメントビザを紹介しているこの手の本を読んで、感ずるのは大橋巨泉も言っているが、やはり行動力にあると思う。その地域、そして人とのコミュニケーションが第一である。と。その前提として資金力、つまり年金ということになる。またこの手の本のなかで感ずるのは、長期滞在はまったく必要がないのでは?と思うことである。3ヶ月間なら大抵どこの国でもビザなしで滞在できるし、日本の気候と行く先の気候を考えて3ヶ月おきに、違う国に滞在するといった方法が現実的でかつ効率的だ。手続きの面倒がない。1月から3月までをタイで、次に4月から6月までをマレーシアそして、オセアニアで日本には9月から12月といったサイクルで移動できれば。

J・Kローリング「秘密の部屋」を読んで。

終に、「秘密の部屋」を発見したハリーはダンブルドア校長の援助の下悪魔を叩き潰す。ハリー・ポッターシリーズ第2段「秘密の部屋」はホグワーツでの学校生活を主体にロン、ハーマイオイニーの親友とともに秘密を解き明かしてゆく。賢者の石から秘密の部屋への展開は見事で、作者の空想力なるもに感服だ。

火曜日, 6月 19, 2007

マイクル・クライトン「大列車強盗」を読んで

時代は1850年代、ビクトリア女王時代のイギリスはロンドンを舞台に物語は、展開する。主人公エドワード・ピアーは、クリミア戦争の英軍兵士の給与としてロンドンの銀行から列車で持ち運ぶ金塊を目当てに列車強盗を計画する。鍵屋を始め、名だたる悪人を部下にして計画した襲撃はうまくいくが、ひょんな事から事件は発覚し捕らえられてしまう。過去形を挟んで物語は展開する。マイケル・クライトンの卓越した表現は、歴史を細部にわたり調査し物語りにする。著者の類まれな才能には、ただ驚くばかりだ。

土曜日, 6月 02, 2007

マイクル・クライトン「サンディエゴの十二時間」を読んで

物語は、主人公の米国務省情報調査官グレイブスと犯人との頭脳線だ。機密情報をコンピューターから盗み出した極右翼の犯人は、神経ガスを強奪。1960年代後半というから、リチャード・ニクソン大統領の時代、中国との接近及び政策に不満を持つ犯人は、カリフォルニア南端のサンディエゴで共和党大会を開く当日大統領が現地に乗り込むその日に、爆弾と神経ガスで100万人の殺戮を企てる。これを阻止すべく主人公は、反生物化学兵器を提唱するノードン博士と仕掛けられた現場であるアパートメントに進入既に犯人は逃亡中に警察の非常警戒線に衝突し死を遂げた。心理作戦を強いられ爆発数分前に。。という後半は行き詰る頭脳線だ。SF探偵小説としても素晴らしい作品だ。「緊急の場合は」「スフィア」と比較してもこちらが断然面白い。

金曜日, 6月 01, 2007

マイクル・クライトン「アンドロメダ病原体」を読んで

 地球外生命体の細胞、ウィルスによる地球汚染に立ち向かう各分野の専門博士の組織するファイヤーグループを科学的に記述したこの本の著者、クライトンの卓越した知識は圧巻である。出版後既に20年を経過しているが、今読んでも新しいし、このような危機を実際感ずるところだ。

月曜日, 5月 28, 2007

J・Kローリング「ハリー・ポッターと賢者の石」を読んで。

世界28カ国に翻訳され800万もの読者を持つという「ハリー・ポッター」シリーズを初めて手に取った。賢者の石はビデオを見た。映像からくる面白さとは別の読書には訴えてくる訴求力がある。それは著者は、宗教の上でつまり神の意思を童話的ミステリーする素晴らしい才能を持っていると思われる点だ。命、愛、そして欲望、悪はたまた友情といった人間のなせる生きるための力がこの本に全てあるような気がする。(560頁)

土曜日, 5月 26, 2007

マイクル・クライトン「緊急の場合は」を読んで。

医科大学在学中にアルバイトとして書いて、アメリカ探偵作家賞に輝いた処女作である。物語は、主人公のジョン・ペリー医師仲間の中国系米国人医師アート・リー医師が中絶を巡る陰謀に巻き込まれ、事件解決リー医師の解放に向けてペリー医師が奮闘する探偵小説である。カレンという若い女性が中絶による出血で死亡する。ボストンで力のある医師J・D・ランドール一族の陰謀により事件は、何も関係ないリー医師がターゲットにされ犯人とされ投獄されてしまう。後半は徐々に犯人像に迫るペリーの活躍が中心となり、思わぬ展開が。アメリカ社会の中絶を巡る問題は、宗教とからみ賛否両論そしてクライトンは、本書の最後に医師あるいは医療と倫理の問題について言及する。(500頁)

金曜日, 5月 18, 2007

マイクル・クライトン「スフィア」球体 上下巻を読んで

実に多彩な能力を持つ著者には、ひたすら感心する。「スフィア」は地球外生命体の存在の可能性を持つ謎のの球体、宇宙船みたいな物体が南太平洋海底3300mで発見された。ノーマンジョンソン博士らが海底探査に向かう、主人公であるジョンソン博士は心理学、ハリー数学博士、ベス動物博士というその道の専門家で構成される調査団だ。球体は現実世界から50年後も進んだハイテクによる金属で包まれていた。宇宙のブラックホールを潜り抜け、海底に沈んだと思われる。謎の宇宙船のハッチを開け潜入した学者たちは、巨大な「イカ」の出現で次々と死んでゆく。宇宙船に入った者に、特赦な能力が備わることが解った。自分が思った事が現実になるという能力だ。著者は、人間の創造性について人間と他の生物を区別するものは、創造力だとする。道具を使えるとか言語が話せるとかではなく、他と決定的に区別されるものは人間の「創造力」だと。(660頁)

月曜日, 5月 14, 2007

マイケル・クライトン「タイムライン」 を読んで。

量子テクノロジーを駆使した時間飛行という物理学の概念を手段に中世フランスの14世紀中期との時空を超えた世界を見事に描写する著者のアイデアは特筆すべきものだ。クライトンのまた歴史観がすごい。宗教、殺戮、暗黒の時代と言われる中世史観を否定する。確実に現代に繋がるテクノロジー文明までもあったという。SF小説は、こう書くんだ、組み立てるのだという見本みたいな作品で、読者を飽きさせないエンターテイメント、脳裏に浮かぶ中世の世界を垣間見る歴史観と描写には脱帽だ。(720頁)

月曜日, 5月 07, 2007

ディスクロージャー を読んで。

マイクル・クライトンの著作を読むのは、初めてだ。「ディスクロージャー」は、美人で聡明な女性管理職メレディスと主人公サンダースのセクハラから端を発し、物語はシアトルのハイテク企業ディジコム社のM&Aが絡み複雑な状況を呈する。主人公サンダースは、会社を相手取り弁護士を介して訴訟へと意を決する。つまりこの物語は男性が女性にセクハラされる。という現実に米国であった話をヒントに組み立てられているという。有能な女性の野望と妬みが思わぬ展開を魅せ、後半は一気に読ませる迫力がある。(480頁)

水曜日, 5月 02, 2007

遂に出た「69」


先日、4月24日埼玉県児玉町の児玉カントリークラブにて、前半33で後半36で69という高スコアーを記録した。苦節25年余のゴルフ人生にして初めての快挙と呼ぶにふさわしい結果でした。かつ、ノーボギーというおまけ付、前半3バーディーは、1から1.5mに付けるアイアンの冴え、後半は、何度もバーディーのチャンスは会ったが、入らなかった、ことに490Yのロングで2オンしながらの3パットは、返す返すも残念だった。

数学的にありえない 上・下巻 を読んで。

アダム・ファウラーの小説は、今回が初めてだ2003年の処女作品だという。前半は、各々登場人物が紹介されてゆく、中盤から後半にかけて物語は一気に加速し正にジェフリー・ディーヴァー的ローラコースター的展開となってゆく。面白く、一気に読むのは勿体ないと思う。統計学、量子物理学など難解な理論を解りやすく解説しながら、サスペンスは展開される。主人公デーヴィッド・ケインは、ふとした切っ掛けで未来予知能力に目覚める。通称「ラプラスの魔」と呼ばれる予知能力。このケインを回り、トヴァスキー、フォーサイス博士が、ケインの捕縛のための、殺し屋を雇い入れる。FBIのナヴァという女性殺し屋と共同で、難関を突破してゆく。エンディングは、ヒューマンなものに行き着き、ほっとするという落ちが付いている。(640頁)


月曜日, 4月 30, 2007

新宝島 江戸川乱歩全集 第14巻を読んで。

昭和18年といえば、世界大戦へと突き進む日本の姿がある。言論弾圧、思想統制の中で乱歩の探偵小説は迫害を受ける。戦意高揚を主題とした子供雑誌に連載される冒険物語はもはや乱歩の世界ではない。この巻に収められている話の中では、偉大なる夢が出色の出来だと思う。戦時下の中で、上記の困難な状況で書かれた探偵小説は現在15巻読後でも私の中では1、2を争う出来映えだと思う。シドニー・シェルダンを思わせる謎解きはこの時期としは冒険的でかつ乱歩の探偵小説への強い意志を感じる。

世界の日本人ジョーク集 を読んで。

京都へ出張のおり、東京駅の本屋で買い求めた新書版である。著者が、東欧のルーマニアに在住2年の経験から、東欧での日本人の評価とは?が書かれているのは興味深い。日本人の評価は戦後高度経済成長あるいはバブル期のまま停滞している。カメラ、眼鏡、ドブネズミ色のワークウェア、仕事、オーバーワーク、過労死と日本人を形容する代表的な言葉だ。護送船団方式に代表される仕事は、古代から狩猟でなく農耕水稲栽培民族としての「村」の意識が日本人の意識形成に多いに関係しているという。

木曜日, 4月 26, 2007

クリスマス・プレゼント を読んで。

ジェフリー・ディーヴァーの短編集だ。全部で16編が収められている。長編小説のような圧倒する迫力とどんでん返しはないが、短編でありながら印象に残る作品が多い、「三角関係」「ひざまずく兵士」それとこの短編集の為に書いたリンカーン・ライム&アメリア・サックス物。短編小説のエッセンスというかそんなものをこの本から感ずるのは私だけであろうか。

火曜日, 4月 17, 2007

地獄の道化師 江戸川乱歩全集第13巻 を読んで。

中編4編、暗黒星、地獄の道化師、幽鬼の塔、大金塊が編集されている第13巻は、昭和14年に書かれて各種雑誌に連載されたものであるという。この1939年は、軍部が主導権を握り着々と太平洋戦争へと突き進む日本の姿がある。思想統制下にあって、乱歩の娯楽探偵小説も発禁本あるいは訂正を強要されるといった状況である。殺人事件の描写など今一恐怖感を呼び起こさない。乱歩は徐々に休筆宣言へと。。乱歩と戦争への係わり方はどのようなものだったのであろうかと考える。それにしても、明智小五郎、小林少年探偵団長の活躍は、我が少年時代に胸を躍らせ読んだ記憶を呼び起こし、懐かしさで一杯になる。

日曜日, 4月 15, 2007

あなたに不利な証拠として を読んで。

R・ドラモンドのこの小説は、2回目となった。読み進めていく中で、「サラ」の章でどうも以前読んだ覚えがあると思い、本棚を探したところやはりあった。作者は、女性制服警官の経験があるという。この本での事件に立ち向かう警察官そして生々しい犯罪現場の状況、死と生がいとも簡単にその境界を越えていく。人間の生とは何か?尊厳とは神とは何かと思わず問わずにいられない状況を作り出している。現実ともミステリー小説の中とも解らない状況だ。この本に人間の生と死が、紙一重で折り重なっている。

火曜日, 4月 10, 2007

Mizuno JPXチタン アイアンを買った。

先日、Yahooオークションにてミズノ「JPXE310Ti」を落札チタンフェースにNS950HTのSRの組み合わせ56000円也、早速鳥かご「練習場」にて、試打する。5Iでロフト角23度は、強烈なストロングロフトだ。同社のMPシリーズが、26度であるから約一番手違う。しかし球筋は、強く高い、ストロングロフトにも拘わらず最近の複合コンパジットアイアンは低重心で玉があがるという。やはりゴルフ道具の進化を感ずる。まだ現場「実践」で使用していないが、楽しみだ。前の2002年のダンロップXXIOと較べても1番手違う。芯を喰うと、5Iで185Y、4Iで195Y位は行く。実に頼もしい限りだ。そして最近になって、「わかった」つまりスウィングの。以前は、つま先体重にてアライメントをしていたが、少しかかと体重を意識してバックスウィングをしてみたらこれが、ナイスショットに繋がった。前2回のラウンドでは、77、80と上々の結果が出ている。14日の現場が楽しみだ。

エンプティー・チェア を読んで。

ジェフリー・ディーヴァーの「エンプティー・チェア」を読んで、私は彼の最高傑作だと思う。お馴染みのリンカーン・ライム&アメリア・サックスのコンビのジェットコースターミステリーだ。兎に角最後の最後まで読者を夢中にさせる緊迫感と一気に読破させる力をこの本は持っている。ノースカロライナのパケノーク郡の小さな町で起こる殺人誘拐事件にライムとサックス介護士のトムが、ライムの手術の為に大学病院を訪れる。いつものセントラルパークにあるライムの部屋の分析機器がここには無い。緊急に調達した古い機器での解析が始まる。犯人を追い詰める中相棒のサックスが、同僚を銃殺してしまう。事件は意外な展開へと進み、警察内部の所長ベルと実業家との癒着そしてこの小さな町全体が、農薬に使う毒薬によって汚染sれていることが判明する。町には子供がいない。このミステリーの周到な展開は正に圧巻というべきもので拍手を送りたい。

日曜日, 4月 08, 2007

ソルトマーシュの殺人 を読んで。

先日本屋で手に取った、世界探偵小説全集の中の1冊グラディス・ミッチェルの「ソルトマーシュの殺人」である。題名のソルトマーシュとは、イギリスの片田舎の村の名前である。ブラッドリー婆さんは心理学者でもある探偵である。村の祭りの情景がこと細かく描写され前半は、ミステリーとはかけ離れた「怠い」という感じだ。そのうち知らないうちに殺人事件があったと聞かされるというように、事件に入っていく語り手の僕は、協会の副牧師である。その語り手と婆さん探偵が殺人事件を追いつめる。何故かインパクトが無い。J・ディーヴァーのジェットコースター的展開とは全く違った、また愛読する乱歩の物とも違う。最後まで読者は、犯人を特定できない。この手法はまた独特だ。物語の山場を山として描写せず、すらっと流す。1920年代の作品でG・ミッチェルの作品は暫く日本で翻訳されることが無かったという。

水曜日, 4月 04, 2007

シャーロックホームズの生還 を読んで。

コナンドイルの「シャーロックホームズの生還」を読んだ。頭脳明晰にして、次々と難事件を解決してゆく彼の論理的で冷淡な個性そして霧の都ロンドンとのマッチングは、数年前ロンドンを訪れその印象とともに私の想像を刺激する。しかし、何故か彼ホームズの孤独な背中が見える。友人ワトソン博士が心配するように、退屈な時間はホームズを阿片・麻薬へと誘う。つまり彼は難事件がなければ生きていけない宿命を持った男なのである。

火曜日, 4月 03, 2007

緑衣の鬼 江戸川乱歩全集第11巻を読んで。

「緑衣の鬼」そして「幽霊塔」も黒岩涙香氏の海外探偵小説の翻訳物を乱歩が、そのワールドで書いた物だという。実に面白く、一気火勢に読むことを強いる魅力を持った2編である。昭和10年頃の作だと言うが、この時代にもこんなに面白い読み物があったとは、考えられないくらいだ。まさにRanpo Worldだ。

水曜日, 3月 28, 2007

ゴルフの神様 を読んで

夏坂健氏の「ゴルフの神様」を読んだ。氏の類い希なる珠玉のエッセーが、イギリスやスコットランドを俳諧しならが、見て感じて書いたというものである。ゴルフ本来の意味がわかる。まず自然があってコースができて、人間がいる。ゴルフのルールでいう「あるがまま」の意味は誠に深い。趣味としてのゴルフ、接待ゴルフ、競技ゴルフと色々あるが、人生と自然とゴルフを理解する人こそ幸福だと思わずにはいられない。そして「あるがまま」と静謐という精神を。。

月曜日, 3月 26, 2007

死の開幕 を読んで。

J・ディーヴァーの最新作と思いきや、初期の作品であった。出張の日、東京駅の京葉線乗り場へ向かう途中の本屋で見つけた。後半の展開は、リンカーン・ライム&アメリア・サックスシリーズを彷彿とさせる例のジェットコースター的だ。主人公のルーンを中心に回る殺人事件だ。ポルノ映画館が、犯人によって爆破されシェリー・ローというポルノ女優が殺される。ルーンはその経緯をドキュメンタリー映画にしようとカメラを手に聞き込みを開始する。前半はかなり、「だるい」展開だ。市警の爆発物処理班刑事、サム・ヒーリーと出会う。ルーン&ヒーリーで殺人犯を追う。後半は、2転、3転と急速な転回が、二人を待つ。J・ディーヴァーの創造するルーンは、サックスへと繋がっていく何かを持っているが、どこか違う。

火曜日, 3月 20, 2007

制服捜査 を読んで。

佐々木嬢著「制服捜査」を読んだ。実は、NHKのBS番組「週間ブックレビュー」の特集で作者が出演し面白そうなので、手に取った。結果は、今一であった。面白くない。J・ディーヴァーや乱歩と比較して全く読者を楽しませる展開が無い。北海道の田舎の一駐在所のお巡りさんつまり制服巡査の事件とも言えない事件を追った物語である。ある日、夏祭りの夜、少女が誘拐される。地元の名士の教育長の教員当時教え子に生ませた息子が犯人だと。。所謂物語の中心がこれである。何ともなさけなく、読むのに疲れた。

月曜日, 3月 19, 2007

魔術師 江戸川乱歩全集第6巻 を読んで。

昭和初期の新聞零細の長編小説2編が、この巻の内容だ。極悪殺人犯人と素人探偵明智小五郎との対決が、その中心だ。2作品とも圧倒的な面白さであっという間に読了してしまう魅力を持っている。乱歩の絶頂期の作品ではないか。と思われる。明智の妻、文代との出会いから結婚に至るプロセスが判る。シャーロックホームズが女嫌いだったのに比し、乱歩の創出した明智小五郎は、結婚する。また少年探偵団率いる小林少年も助手として登場する。乱歩のミステリーの面白さを端的に表現されている作品だと思う。

金曜日, 3月 16, 2007

「緋色の研究」新訳シャーロックホームズ全集 を読んで

1886年、ドイルがホームズ・ワトソンの探偵物を書いた最初の作品であるという。ワトソンとホームズとの出会いが、この作品でわかる。1886年といえば、明治18年この時代の探偵物を今読んでも面白いとう意味は、何なのだろうか。ドイルが創出したホームズという人物像そして希有な相方ワトソンとの絶妙なコンビネーションで事件を解決してゆく展開なのだろうか。あるいは、ホームズの事件に対する深い知識と洞察力は、現在ミステリーに引き継がれていると思う。

木曜日, 3月 15, 2007

「陰獣」江戸川乱歩全集 第3巻を読んで。

「陰獣」は、乱歩の傑作といわれる作品であるという。昭和初期の作品にあって、一転、二転三転というどんでんがえし的作風は、現代のミステリー作家であるJ・ディーヴァーを彷彿とさせる。ジェットコースター的展開とまではいかないが、かなり面白い。最終結末が、明確でないという当時の批判はあったということだが、かえって読者の想像を掻き立てるに十分である。また最後編に綴られている「芋虫」もなかなか迫力がある戦傷者を題材にしているため、当時イデオロギー的作品として左翼に歓迎されたと述懐している乱歩であるが、人間の本能としての「善」と「悪」を短編の中に凝縮しさらに印象付けに成功している希有な作品だと思う。

日曜日, 2月 25, 2007

騎士たちの一番ホール-不滅のゴルフ名言集 を読んで。

以前夏坂健の著作を数冊読んだ記憶がある。ベンホーガンやウォルターヘーゲンなど過去の名手のゴルフの名言を解説している。確か著者は、英国大英博物館やセントアンドリュースを訪ねゴルフに関する多数の歴史的文献を収集しているコレクターだと読んだ覚えがある。貴族から一介ののサラリーマンまでゴルフに熱中し、人生をゴルフとともに生きた先人の知恵と蘊蓄が、今ゴルフを趣味としまた読書を趣味として生きる自分にとって、中々味のある名言が数多く納得させられる本である。

魔術師 を読んで。

リンカーン・ライムとアメリア・サックスシリーズ第5段であるという。2003年の刊行である。例によって、ローラコースター的物語の展開は、このシリーズを愛読する読者には必要不可欠な要素だ。期待に裏切られず素晴らしい作品に仕上がっている。イリージュニストとライム・サックスのコンビが戦う。一気に読了する魅力がある。

火曜日, 2月 20, 2007

江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪 を読んで。

第8巻に収めてある作品は、比較的乱歩が作家となった初期のものだという。昭和5、6年頃だ。約800ページに及ぶ長短編だ。この第8巻には明智小五郎は登場しない。「妖虫」には三笠龍介という老探偵が登場する。乱歩の推理探偵小説を読んでいて、読んでいる途中というか読書中の面白みをいつも感じ、人は死んでも作品が残る素晴らしさをいつも感じる。昭和初期の作品というよりは、やはり乱歩だからであろうか。

火曜日, 2月 13, 2007

空海の思想について を読んで。

梅原猛の「空海の思想について」を読む。そういえば、ここ数年川崎大師「平間寺」を年始参りに行く。空海の思想は、非常に難解であるという。吉本隆明の「親鸞」についての書を読んだ。悪人正機説そこに極限まで、自己の精神を探求する親鸞の究極の「悟り」がそこにあると思ったと同時に、宗教、仏教とは、世間この自己の生ける周囲、世界と隔絶した状況で何の意味があるのだろうかという強烈な疑問が湧いた覚えがあった。弘法大師空海のいう真言密教は、「世界肯定の思想が、密教の思想にある。」と著者は言う。世界肯定、人間万歳が、真言密教の根底にあるのではと。お釈迦様でなく、大日如来による宗教の普遍性を歴史の中に見いだそうとした空海という人の思想をもっと勉強したいと思う。

四つの署名 を読んで。

シャーロック・ホームズ全集の「四つの署名」は、コナンドイルの推理小説の第2段であるという。インドの財宝を巡る殺人事件だ。ホームズは、冒頭から麻薬をやる。この時代1890年頃は、ごく当たり前だったという。この本にホームズの仕事観、恋愛結婚観、人生観がわかる。「恋愛は、理性とは相容れず、判断力を狂わせる。」という。旧友ワトスン博士の結婚に際しても、おめでとうとは言わない。躁と鬱を繰り返す、ホームズの日常しかし一度気の向く仕事に出会ったら、昼夜を問わず集中する。麻薬の助けを借りながら。。。

日曜日, 2月 04, 2007

ちいさな王子 を読んで。

サン・テクジュペリの「ちいさな王子」は、彼の44歳の人生の終了2年前に執筆された童話である。第二次世界大戦末期のこの時代は、仏は言論統制下でもあったようだ。彼は生粋の飛行機乗りであったという。今で言う国際郵便配達として飛行機に乗りそして戦争でも飛行機に乗る。最後は飛び立った飛行機が戻ってこなかった。2003年海中から残骸が見つかったと言う。砂漠に不時着した飛行士が、ちいさな王子に出会う。王子の物語そして再び飛行士のぼくは、飛び立ってゆく。人生の最後の果てしなく、青く広い大空へ。そこはなとない孤独・寂寥感が根底に漂っている。病床にあった作者が綴ったこの書は、死への旅立ちを意味しているのかも知れぬ。

土曜日, 2月 03, 2007

シャーロックホームズ全集 シャーロックホームズの冒険 を読んで

数十年も前に、読んだが題名は全く覚えていない。今回の新訳「シャーロックホームズの冒険」は読みやすく、読むにつれて次々へと物語の進行を思い出してゆく。昔懐かしく、胸を躍らせて読んだ記憶が走馬灯のように蘇る。懐かしく思い出される一冊であった。短編12編は、19世紀後半のロンドンとホームズの人格とが相まって、暗い。10年前にロンドンを訪れたときに、ベーカー街に立ち寄るべきだったと思う。

木曜日, 2月 01, 2007

青い虚空 を読んで。

J・ディーヴァーの「青い虚空」を読んだ。ハッカー・クラッカーによる殺人事件を題材にハッカーの追い求める果てしない無限の可能性の世界、これこそがディーヴァーの造語である「青い虚空」なのだ。シリコンヴァレーで起きたストーカによる殺人事件を切っ掛けに事件は、一人のハッカー「フェイト」に絞り込まれる。FBIは、同業ハッカーであるジレットなる人物を使い目には目をの戦いが始まる。最後はやはりディーヴァー特有のジェットコースター的結末による。ライム・サックスシリーズとは別の路線であるが、非常に面白いディーヴァーの傑作に数えられる名著である。

金曜日, 1月 19, 2007

これも経済学だ を読んで。

著者は慶應義塾大の現役の教授だ。「これも経済学だ」を読んで、何の感動もない。所得格差、格差社会の捉え方も全く視点が違う。「ワーキングプアー」をどう説明するのか。経済学も目的は消費者を幸せにすることだという。不均衡、所得格差は致し方ないという。なぜなら、競争社会だから。と言う。現状の日本社会を著者独自の視点・思想で解明すべきと思うが、何か答えがはぐらかされて無駄な事を長々と説明する本当にこれも経済学だ。

水曜日, 1月 17, 2007

ララバイ を読んで。

チャック・パラニュークの「ララバイ」は、私にとって2冊目の本である。ニューヨークの世界貿易センタービルのテロリストによる破壊は、米国知識人や作家に多大な影響もたらしたと言える。混沌、まさに混沌とした時代を象徴する事件であった。ちょうどこの時に書かれたと言う。殺人、暴力、家庭の愛、そして愛と崩壊が、焼けこげた死体、土の中に埋没する屍、世界を救う道はあるのか?日常というものの崩壊がここにある。

土曜日, 1月 13, 2007

死の教訓上下巻 を読んで。

ジェフリー・ディーヴァーの「死の教訓」は、ディーヴァーがブレイクする前二作目に当たるという。リンカーン・ライム&アメリア・サックスシリーズと比較し物語の展開は遅々としているが、後半のディーヴァーの真骨頂であるジェットコースター的終末への展開は既に「静寂の叫び」へと発展してゆく道程と思える。ビル・コードの家庭とオーデン大学など人物描写や大学の経営まで含めた内情がこと細かく描写されている。そのそれぞれの展開が終末に向かって関連してゆく。事件が落着した後で主人公のコードが漏らした言葉「人生が課す重荷は果てしない。そう、なすべきことはあまりにも多い。つぎからつぎへと・・・・・。だが、。。」タイトルの死の教訓は、実に「人生の教訓」と思える。

水曜日, 1月 10, 2007

江戸川乱歩全集 第12巻 悪魔の紋章 を読んで。

第12巻の「悪魔の紋章」は、先に読んだ探偵が犯人という設定である。探偵の宗像隆一郎博士と名探偵明智小五郎の対決である。乱歩の作品は、いつも「娯楽雑誌」かのように私は読んでいる、読書中がもっとも面白い後でつまり数日経つと忘れてしまう。そんな探偵小説だが、読書中も読後も面白くない小説よりはましだと思う。

火曜日, 1月 09, 2007

静寂の叫び を読んで。

ジェフリー・ディーヴァーの「静寂の叫び」を読んだ。ディーヴァーの比較的初期の傑作である。聾唖学校のバスが、脱獄囚に乗っ取られ6人の生徒と2人の教師が人質となり、今は使われてない食肉加工工場に幽閉される。主人公であるFBI危機管理チームの交渉人ポターが、人質解放にあたる。生き生きとした描写、容赦ない冷酷なハンディーの犯人像、FBIチームの交渉を巡る作戦と息詰まる展開は圧巻だ。ディーヴァーの常套で最後のどんでん返しは、また見事と言うしかない。のちの「ボーンコレクター」をも彷彿とさせる傑作である。

木曜日, 1月 04, 2007

悪たれの華 を読んで。

小嵐九八郎著「悪たれの華」この作者の本は初めてだ。主人公新八のちの玉屋市兵衛は、上州は群馬県鎌原村現嬬恋村鎌原の出だ。時は江戸時代、浅間山の大噴火で濁流の中を生き抜き、一揆衆となり信濃に逃れ、放つ火殺人を繰り返しながら生き延び江戸へと上った。浅間山の大噴火にも似た新八の想像する「花火」を作る為に。先代玉屋の花火屋に雇われ、一年足らずの奉公の末、同じ花火屋鍵屋に奉公する。数人の女を誑かし鍵屋の娘いとを殺めながら、江戸の大火事に託つけて、遂には玉屋に火を放ち一族を抹殺し、玉屋の主人市兵衛として居座る。また自分の自身の姉をも殺めてしまう。全ては「花火」の為、お城にも届く三百尺の打ち上げ花火を上げるために。殺人そして女犯をしながら、目標達成の為には手段を選ばぬ主人公の生き様、最後に中風に倒れなおも執念で理想とした「花火」の打ち上げに成功する。悪があるから、美しく輝く華火をと。生涯目標一つにして生き抜く主人公の生涯を見事に描いた作品600頁2段の書であるにも拘らず、先へ先へと読ませる圧倒的な迫力がある見事な作品である。「人生は斯くも過酷であり、生きる価値はなんなのであろうか」と。

火曜日, 1月 02, 2007

シャロウ・グレイブズ を読んで。

ジェフリー・ディーヴァー「シャロウ・グリブズ」は、ディーヴァーの1995年の作だと言う。期待して読んだが、最近の著作にあるようなハラハラ・ドキドキ感は全く無い。普通の小説だ。ジョン・ペラムとトーレンス家族との田舎町での遭遇そして、相棒の殺人に巻き込まれる。一応は殺人事件を解決するペラムの推理となっているが、その物語のスピードは「12番目のカード」「コフィンダンサー」にみる展開と全く違った、ゆっくりとしたものである。これには驚かざるを得ない。

月曜日, 1月 01, 2007

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 を読んで。

乱歩の昭和3年頃の作だという。今まで読んだ全集の乱歩と比較し、ちょっと味が違うといったところか。中でも「蜘蛛男」は、大どんでん返しがまっていた。最後に明智小五郎との対決といった。予測もできない展開に一気に読んでしまった。何か読んでる途中での、わくわくする期待感というか。面白い。
2007年の第一日目が、始まった。今年も乱読の年になりそうだ。果たして、阿部内閣の下で、この日本が美しい国に生まれ変われるだろうか。期待している国民もまたいない。日増しに世界は、「グローバリゼーション」の波の中に否応無く置かれる状況だ。この世界で、果たして自分あるいは会社は何をするべきかを真剣に考えていかなくてはと思う元旦である。